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音声コンテンツの時代到来。音声から考えるこれからのメディアと広告の未来(イベントレポート)

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「音声から考えるこれからのメディアと広告の未来」と題したイベントが11月27日(東京・六本木)に開催された。

音声から考えるこれからのメディアと広告の未来

主催したのは、アドテクノロジーのサービスを提供するpopIn株式会社とハフポスト日本版。これまでもメディアと広告に関するイベントをシリーズで開催しており、今回はその4回目だ。

イベントは、全五部のプログラムに分かれており、“声で情報を届ける魅力”に始まり、グローバルの業界動向、ライフスタイル変化、これからのメディアと広告のあり方など参加者とともに考えた。

オープニングでは、popIn株式会社 副社長 髙橋大介氏が登壇し、「まだ誰も結論はもっていない。だからこそ、この場で音声の可能性について語り合いたい」と呼びかけた。

音声から考えるこれからのメディアと広告の未来popIn株式会社 副社長 髙橋大介氏

人の声だからこそ伝わる表現

第一部では、声で情報を届けるプロによるトークセッションが行われた。

ファシリテーターに元TBC東北放送アナウンサーで現ハフポスト日本版ニュースエディターの小笠原遥、ゲストに「風の谷のナウシカ(クシャナ役)」や「機動戦士Z・ガンダム(ハマーン・カーン役)」などで知られる声優の榊原良子氏が登壇。

ハフポスト日本版 ニュースエディター 小笠原 遥(左)、声優・ナレーター榊原良子(右)

長年、声優としてキャリアを積み上げてきた榊原氏は、「声優の在り方もアップデートしていかないと、音声技術が進化しているAIに取って替わられるのではないか」と危機感をもって話した。

小笠原は、「中国ではAIアナウンサーがニュースを読む時代になっている」と話し、これからの声優の職業に必要なスキルとは何かと問いかけた。

榊原氏は、「受け手(ユーザー)は、よりライブ感・リアルな表現を重視しているように思う。AIは正確に言葉を伝えることはできる。けれども、人間らしさを作り出すことはできない。なぜなら人間が持っている唯一無二の「感情」が、AIには存在しないから」と述べた。

声優・ナレーター業に加え、若手育成にも力を入れている

さらに、そうした人間らしさを「ゆらぎ」と表現し、こう語った。

「人間はゆらいでいるものでしょう。私はそのゆらぎが耳に触れてくる方が好きです。AIは整えられたもの。整えられすぎたものを見ると息苦しくなりませんか。どこかがちょっとずれている方が居心地がいい。人間の感覚に気持ちよく入っていくような表現が一番いいんじゃないかなと思うんです」(榊原氏)


世界的な音声コンテンツブーム

第二部では、Tech Crunch Japan編集記者の菊池大介氏が登壇し、アメリカでの音声コンテンツの動向を紹介した。

菊池氏は、「ポッドキャストの利用者が7,300万人を超え、車社会のアメリカでは音声コンテンツが人々のライフスタイルに根付きつつある」と話した。

加えて、業界内の大きなトピックスとして「音声プラットフォームのSpotifyがポッドキャストの関連会社AnchorとGimlet Mediaを買収するなど音声業界に大きなうねりが起こっている」という。

アメリカ以外に中国でも音声コンテンツは、人々のライフスタイルに浸透している。

第三部では、中国発の音声プラットフォーム「himaraya」を提供するシマラヤジャパン株式会社 副社長 齋藤ソフィー氏が登壇。中国での音声コンテンツの現状を紹介した。

同社が提供する「himaraya」は、すでに6億ダウンロードを記録し、最大手音声プラットフォームに成長しているそうだ。

主に上海や北京などの一級都市に住むユーザーが利用しており、その平均聴取時間は、170分/1日にものぼる。(スマートフォン平均利用時間約180分/1日と同規模 ※ニールセンの調査より)

さらに、プラットフォームに音声コンテンツを提供するキャスターの数も膨大で、プロからアマチュアまで700万人にものぼる。

音声プラットフォーム「himaraya」を提供するシマラヤジャパン株式会社 副社長 齋藤ソフィー氏

齋藤氏は「700万人中、プロは100万人程度で残りの600万人は素人(アマチュア)だと説明し、中国では、キャスター業が人気の職業になっている」と説明した。

デバイスは様々で、スマートフォンはもちろん、スマートスピーカーや車積機器など多岐にわたる。また、「himaraya」を利用するユーザーの中には、自分の子供にテレビやYouTubeの代わりにスマートスピーカーを通して童話や学習などの音声コンテンツを聴かせている親もいるそうだ。

音声コンテンツから考えるあたらしいメディアと広告のカタチとは?

第四部のパネルディスカッションでは、ファシリテーターにハフポスト日本版編集長の竹下隆一郎、パネラーに齋藤ソフィー氏、音声広告を取り扱う株式会社オトナルの代表取締役 八木たいすけ氏が登壇。

それぞれの立場から「音声の未来」についてディスカッションを行なった

お金、感情、海外マーケットなど9つのテーマから音声の未来について語りあった。

これからのメディアの方向性について八木氏は、アメリカでのスマートスピーカーの所持率が3人に1人という実態から「音声コンテンツが次のメディアになり得る」と話す。

また竹下編集長は、コミュニケーションの観点から「スマートスピーカーでの情報収集が当たり前のライフスタイルになった場合、オープンな情報空間(音声)が実現し、より人々のコミュニケーションが活発化するのではないか」と考察。

日本での音声広告の未来についても、海外の事例を元にディスカッションが繰り広げられた。

八木氏は、国内の音声広告市場について、「アメリカでのデジタル音声広告のメディア側の収入は近年爆発的に増加している。2016年には約1,185億円、2年後の2018年には約2,400億円と2倍以上の規模に成長している。国内の音声広告市場の見立てとしては、近い将来240億円程度になるのではないか」と推測する。

音声は忙しく働く人々のスキマ時間に入り込んでいくだろうと語る

さらに、市場規模に加え、音声広告のユーザー体験に関する調査結果を紹介。

2019年2月に米国Adobeが1,000人を対象に行なった調査によると77%が音声広告に対して『押し付けがましくない』、『他のチャネルの広告より興味を引く』と回答したという。

「人の声で話すことによって、本来嫌がられやすい広告の敷居が下がるかもしれない。広告という文脈でも音声は可能性があるのでないか」と話した。

齋藤氏は、「スターバックスとhimarayaが300万個限定で行なったポッドキャストキャンペーンが大盛況だった」と振り返る。これは、コーヒーのボトルに「himaraya」へのリンクバーコードを印字し、バーコードを読み込むと有名な芸能人・声優によるポエムを聴けるというもの。この他にも中国ではユニークなアプローチが続々と登場しているという。

グローバルの規模感およびユーザー体験から見ても、音声コンテンツ市場はポテンシャルを感じる。

「日本人のライフスタイルとフィットするのか」という竹下編集長の問いかけに、齋藤氏は、「音声コンテンツは、動画や書籍などの視覚情報のように、手や目を使わない状態で楽しめる。育児や家事の両立で忙しい世代や、ビジネス層にとっても『ながら聴き』できる音声コンテンツはとても便利だと思う」と力を込めた。

さらに「日本は、元々ラジオ文化が根付いている国。中国と比べてものづくりの精神があり、コンテンツを作れるプロの方がたくさんいる。加えてコンテンツに対してお金を払う意識もあるので、環境さえ整えば、音声コンテンツは爆発するのではないか」と日本市場の可能性について話した。

音声コンテンツの可能性はいかに

最後に、本イベントの主催popIn株式会社 執行役員メディア担当 西舘亜希子氏が登壇。popIn株式会社が考える音声コンテンツの未来とその可能性について語った。

popIn株式会社は、ウェブ広告のレコメンドエンジンやAI技術などを搭載したIoTシーリングライトを提供している

まず、ユーザーの実態を把握するべく、同社はイヤホンやヘッドホンの利用率やイヤホン装着時における音声コンテンツを独自に調査。20歳以上を対象にした調査によると、日本のイヤホンの利用率は、51.8%。また、音声コンテンツの80%以上が音楽で、その次にYouTube、ラジオという結果だったと説明した。

音声コンテンツは、ユーザーに受け入れられるのか。

イベント開催にあたって、popIn株式会社とハフポスト日本版は共同で、編集記事を音声コンテンツ化し、その聴取率等の調査を実施。

その結果、音声の場合、再生ボタンをクリックした人が平均2.71回(1人あたり)と複数回音声コンテンツを再生していたことがわかった。聴取時間も平均4分21秒と、記事の読了時間よりも長い。

つまり、読んでいるよりも長い時間コンテンツと接触をしているということだ。さらに、合成音声と人間の声でABテストしたところ、人間の声の方が52%も長く聴取されていたという。

popIn株式会社とハフポスト日本版が共同で調査を行なった(10日間)

西舘氏は「良質なコンテンツとの接触機会を提供すれば、生活者は記事コンテンツと同等以上に音声コンテンツに時間を割いてくれるだろう」と希望を語った。

一方で、耳の可処分時間の大半を占める音楽から、音声コンテンツの聴取習慣を形成していくために必要な要素として、3つを挙げた。音声コンテンツとの出会いを普段の生活導線の中で機会を設けること、いかに良いコンテンツを新規のユーザーに接触可能な形で流通させていくか、そして、デバイスとコンテンツの両面でどのように開放していくか。それが今後の課題だと話す。

西舘氏は「市場を立ち上げるには当たり前だが弊社だけでできることではない。ここにいる皆さんと一緒になってマーケットを協創したい」と締め括った。

音声コンテンツの普及は、私たちのライフスタイルはもちろんのこと、メディアや広告のカタチまで刷新していくだろう。底知れない可能性を秘め、国内外で盛り上がりを見せつつある音声市場。

これからの動きに注目だ。


山口敬之さんの判決を受けて、元所属先のTBS「誠に遺憾」とコメント 伊藤詩織さんの裁判

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伊藤詩織さん

ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者の山口敬之さんから性行為を強要されたとして慰謝料1100万円の損害賠償を求めた民事訴訟で、東京地裁の鈴木昭洋裁判長は12月18日、山口さんに330万円の支払いを命じる判決を下した。

判決を受け、TBSは報道各社に声明を出し、「元社員の在職中の事案であり、誠に遺憾です」とコメントした。

山口さんは、TBSで官邸キャップやワシントン支局長などを歴任したエース記者だった。2016年5月末にTBSを退社し、フリージャーナリストに転身。テレビの情報番組などでコメンテーターとしても活躍していた。

クリスマス気分を盛り上げるデコレーションアイテム5選

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お家でのパーティーも、グッと盛り上がりますよね!

街にイルミネーションが輝き、クリスマスソングが流れる季節がやってきました。令和最初のクリスマスはどんな時間を過ごす予定ですか?

外でクリスマスムードたっぷりな街並みを楽しむのもよいものですが、家の中をツリーやライトなどで飾り付ければ、特別なクリスマスを演出してくれるはず。

そこで今回はクリスマスを盛り上げてくれる、デコレーションアイテムを5つご紹介します。

キラキラ光るミニクリスマスツリー

クリスマスツリー 45cm ツリー オーナメント付き

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クリスマスの定番アイテムといえば、やはりクリスマスツリーでしょう。しかし「家の中に飾るには場所...」と飾るのをためらう人も多いはず。

そんな人におすすめしたいのが、今回紹介するミニクリスマスツリーです。

高さが45センチなので、テーブルの上にも設置できます。ミニサイズですが、部屋にツリーがあるだけで、クリスマスムードが一気に高まるはず。

クリスマスツリーといえば、オーナメントでの飾り付けも楽しいですよね。この商品には、星・キャンディー・クリスマスボール・ベルなどもついています。
子どもと一緒に飾り付けをし、完成後にライトを付ければ素敵な思い出になりそうです。

組み立て式ですが簡単に作ることができ、枝をたためばコンパクトになるのも嬉しいポイント。次のクリスマスシーズンまで邪魔にならずに収納しておけますね。

マストアイテム「クリスマスリース」

J-KONKY クリスマス リース 30㎝

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次に紹介するのは直径約30センチのクリスマスリースです。壁や玄関などに飾れば一気にクリスマスムードを演出することができます。

またLEDライトを付けるとピカピカと光る機能も。飾り付けのアイテムは鈴、リボン、花、クリスマスボールなど可愛らしいアイテムが揃っています。

また、コンセントが必要ない電池式なので場所を選ばないのも嬉しいポイントですね。

8種類の点灯パターンが楽しめるイルミネーションカーテンライト

V-Dank イルミネーション 96球 3.5M x 0.65M

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星型でつららの様なデザインのイルミネーションライト。壁に下げたり、天井から吊るしたりして飾り付けができます。

長さは約3.5メートル。96球のライトと16個の星型ライトは、温かな光で部屋を灯してくれます。光が拡散するよう加工されているので、どの方向からもきれいに輝いて見えます。

クリスマスシーズン以外にも、パーティーやハロウィーンなど、さまざまなシーンで使えるアイテムです。

宝石のように輝くLEDイルミネーションライト

LEDイルミネーションライト ジュエリーライト 100球 10m

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さまざまな色の灯りが宝石のように輝き、幻想的な雰囲気を醸し出すイルミネーションライト。約10メートルの長さのワイヤーに100個もの粒のライトが付いています。

点灯パターンは全8種類。リモコンで点灯パターンを選ぶことができ、光の強さも調整できるので、さまざまなシーンに対応してくれます。

電池式なので場所を選ばないのも特徴です。電池ボックスは防水加工なので、屋外で使うのにもおすすめ。

コードの部分は銅線で曲げることもできるので、星やハートなど好きな形にデザインも可能。
また、ライトはLEDなので、電力消耗が少なく低発熱、タイマーもついていますよ。

膨らませて飾り付けるビックサイズクリスマスバルーン

クリスマス飾り付け バルーン セット 大容量 28ピース

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膨らませて飾り付けるクリスマスバルーンセット。ベルやツリー、サンタ、星や雪の結晶などがセットになっています。

「MERRY CHRISTMAS」のゴールド文字風船や、緑色、赤色、金色の風船などさまざま。可愛らしいデザインで楽しい雰囲気の演出してくれるアイテムなので、クリスマスパーティーに最適です。

バルーンに加え、膨らませるためのハンドポンプ、壁などに貼り付ける両面テープがセットになった商品も用意されています。 

まとめ

ツリーやリース、イルミネーションライトなど、クリスマス気分を盛り上げてくれるアイテムをご紹介しました。

クリスマスは年に一度の心踊る楽しいイベント。せっかくならお家をクリスマスムードたっぷりにしてみてはいかがでしょうか?ぜひ令和最初のクリスマスを楽しんでくださいね! 

※記事で紹介した商品を購入すると、売上の一部がハフポスト日本版に還元されることがあります。

伊藤詩織さんは、判決後に何を語った?「孤立しやすい性暴力のサバイバーを、ぜひ温かく…」

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伊藤詩織さん

「見えているこの景色が、以前とはまったく違う」

ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者の山口敬之さんから性行為を強要されたとして慰謝料1100万円の損害賠償を求めた民事訴訟。12月18日に東京地裁で行われた判決で、鈴木昭洋裁判長は、山口さんに慰謝料など330万円の支払いを命じる判決を下した。

 伊藤さんが司法記者クラブで、名前と顔を出して山口さんからの被害を訴える記者会見を行ったのは、2017年5月29日。

性被害を顔や名前を明かして告発するのが珍しかったこともあり、大きな注目を浴びたが、一方で心ないバッシングもあった。刑事告発が不起訴とされたこともあり、報道するメディアも少なかった。

判決後、東京地裁前で大勢の報道陣と支援者たちに囲まれて取材に応じた伊藤さん。涙ぐみながら「今後、同じような経験をした方々に、ぜひあたたかい声とあたたかい目で...。今後、このように孤立しやすい性暴力のサバイバーを、皆さんぜひ社会の空気から変えていけるようにあたたかく...」と言葉を詰まらせながら感謝の言葉を繰り返した。

 

「事実は真実であると認められる」判決で合意のない性行為と認定

開廷前から山口さんと向かい合う形で着席した伊藤さん。

背筋を伸ばして緊張した面持ちで真っすぐに前を見つめたが、目には涙が浮かんでいた。手に握りしめた小さなぬいぐるみにすがるように気丈に振る舞ったが、判決を聞き、ホッとした表情を浮かべ、裁判官に深く一礼した。

グレーのスーツにパープルの格子柄ネクタイで着席した山口さんは、開廷前は目を閉じて両手を組んでいたが、判決は無表情で聞いていた。

訴状などによると、伊藤さんは2015年4月4日の早朝、就職相談のために食事をした当時TBSのワシントン支局長だった山口さんから、意識を失った状態で性行為を受けるなどした。山口さんの「不法行為」で肉体的・精神的な苦痛を被ったとして、慰謝料1100万円の損害賠償を求めていた。

一方、山口さんは2019年2月、伊藤さんから名誉を毀損されたことで社会的信用や仕事を失ったとして、慰謝料1億3000万円や、謝罪広告の掲載を求めて反訴。このため、裁判では、山口さんの訴訟も合わせて審理された。

判決では「酩酊状態にあって意識のない原告に対し、合意のないまま本件行為に及んだ事実、意識を回復して性行為を拒絶したあとも体を押さえつけて性行為を継続しようとした事実を認めることができる」として、山口さんの不法行為が認定された。 

また、山口さんの反訴については、「(伊藤さんが)自らが体験した内容やその後の経緯を明らかにし、広く社会で議論することが、性犯罪の被害者を取り巻く法的、社会的状況の改善につながるとして公表したことが認められる。公益をはかる目的だと認められる」として、山口さんの名誉を棄損する行為ではないと判断し、請求を棄却した。

さらに、伊藤さんが山口さんから受けた性被害を告発した内容について、「摘示する事実は真実であると認められる」とした。 

 

実名をあげて被害告発「公共性および公益目的がある」

「すべての努力はジャーナリストになるために」

伊藤さんは、著書「Black Box」の中でこう記している。

ニューヨークの大学でジャーナリズムを学んだ後、トムソン・ロイターでインターンとして働いていた伊藤さんは、両親のすすめもあって正社員として就職できるメディアを探す中で山口さんと会食の機会を持った。TBS以外にも、複数の報道機関に応募していたという。

2017年5月の司法記者クラブでの会見には、「声を上げられる社会になってほしい」との思いで普段通りの服装で臨んだが、「シャツのボタンを留めていないのはおかしい」「笑っていた」など伊藤さんの主張を疑うような批判や脅迫のメッセージが届いた。しばらくは、食べ物が喉を通らず起き上がることができない日々が続いたという。

なぜ、性被害を訴える側が責められるのか。なぜ、勝手に「被害者」のイメージを決めつけるのか。伊藤さんは「おかしい」とずっと発信し続けてきた。

声を上げ続ける理由について、伊藤さんは2017年10月に日本外国特派員協会で行った記者会見でこう述べている。

「自分の中で唯一クリアだったのは、これ(自分の体験)が真実であり、自分でそれにふたをしてしまったら、真実を伝える仕事であるジャーナリストとしてもう働けないと思った」

伊藤さんが声を上げ続けたことについて、判決は「性犯罪被害者を取り巻く法的、社会的状況を改善すべく、自らが体験した性的被害を公表する行為には、公共性および公益目的があると認められる」と認定。

伊藤さんは、判決後に「長かったですね。でも、こうやって少しずつでも大きな変化が…」と涙ぐみながらも笑顔を見せた。

 

伊藤さん「孤独な気持ちになることがあった」

判決前、前夜はよく眠れなかったと明かした伊藤さんは、「刑事の時には、手に届かなかった情報や分からなかったブラックボックスがたくさんあった。民事訴訟のプロセスの中で出てきた証言や公になった事実があった」と訴訟の意義を語っていた。

ほぼ1日かけて行われた7月の本人尋問では、法廷で約4年ぶりに山口さんと対面。セカンドレイプのような質問に耐える場面もあった。

「尋問で顔を合わせるのは緊張していたけれど、相手方の表情を自分の目で見れたことは貴重だった」と振り返る一方、尋問前には体調を崩したことも明かし、裁判で見えた課題についても指摘した。

「支援してくれる方がたくさんいても、孤独な気持ちになることがあった。でも、多くの方が一人で経験していること。本当に負担が大きい。そういう負担を軽減していただきたい」

 

判決を受け、山口さんが当時在籍していたTBSテレビは「元社員の在職中の事案であり、誠に遺憾です」とコメントを発表した。

裁判で、山口さんは、伊藤さんとの性行為は認めたが、「彼女が明らかに性交渉に誘ってきているものと理解した」として合意の上だったと主張していた。山口さんは、法に触れるような行為は「行なっていない」として、伊藤さんの主張については「虚言」だと反論していた。

12月18日午後には、山口さんと伊藤さんはそれぞれ都内の別の場所で記者会見を開く予定だ。また、19日には外国特派員協会で、山口さんが午後1時、伊藤さんが午後3時からそれぞれ記者会見する予定となっている。

山口敬之さん「まったく納得できない」として控訴へ。伊藤詩織さん裁判

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記者会見する山口敬之さん

ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者の山口敬之さんから性行為を強要されたとして慰謝料1100万円の損害賠償を求めた民事訴訟。12月18日に東京地裁で行われた判決で、鈴木昭洋裁判長は、山口さんに慰謝料など330万円の支払いを命じる判決を下した。

午後2時から都内で記者会見した山口敬之さんは、判決について「内容にはまったく納得できません」として、「すぐに控訴する」と述べた。山口さんが記者会見するのは、伊藤さんが被害を公表してから初めて。

記者会見には、北口雅章弁護士と文芸評論家の小川榮太郎さんらが同席。司会は月刊Hanadaの花田紀凱編集長が務めた。

山口さんは改めて「法に触れる行為は一切していない」と強調した。

判決では、伊藤さん側の主張が認められたかたちだが、「客観的証拠に基づいて伊藤さんの主張の矛盾点を指摘したが、これが検証されることなく、ほぼ無視された。双方の主張の信ぴょう性が問われているのに、私が説明した部分はことごとく否定され、伊藤さんが言ったことを一方的に事実、真実とされている」だと反論し、控訴審で争う構えを示した。

訴状などによると、伊藤さんは2015年4月4日の早朝、就職相談のために食事をした当時TBSのワシントン支局長だった山口さんから、意識を失った状態で性行為を受けるなどした。山口さんの「不法行為」で肉体的・精神的な苦痛を被ったとして、慰謝料1100万円の損害賠償を求めていた。

一方、山口さんは2019年2月、伊藤さんから名誉を毀損されたことで社会的信用や仕事を失ったとして、慰謝料1億3000万円などを求めて反訴したが、判決で棄却された。

関東では20度を超えた場所も。12月中旬とは思えないほどの暖かさ

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 きょう(18日)は全国的に朝の冷え込みが緩み、千葉県の館山など、関東ではすでに20度を超えた所があります。

ポイント解説へ

全国的に暖かい朝に

きょう(18日)は全国的に朝の冷え込みが緩み、各地で平年より高く、最低気温が0度未満の冬日が100地点未満となりました。これは11月24日以来、24日ぶりです。札幌でも7日ぶりに最低気温が0度以上となりました。

関東 昼前に20度超えの所も

関東地方も朝の冷え込みが緩み、日中は日差しに後押しされて気温が上昇している所が多くなっています。また、日本海側からの風が山を越えて、緩やかなフェーン現象が発生していることも考えられます。千葉県の館山では午前9時56分に20度1分など、12月中旬とは思えないほどの暖かさになっています。このあとも気温はさらに上がる所が多くなりそうです。ただ、夜は北風が吹いて空気が冷たく感じられそうです。体調管理にご注意下さい。

(日直主任日本気象協会 本社日直主任)

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悪天候でビーチウェディングが中止に ⇒ スタバで即興の結婚式が実現

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心優しい人たちの助けで、ウェディングが実現した。

ある女性カップルのウェディングの計画が台無しに...。しかし、心優しい友人や見知らぬ人たちが力を合わせたことで、特別な日となった。

12月13日、アンバー・プライラーさんとケイト・マングさんが、アメリカ・サウスカロライナ州のビーチで、4人の子供たちと数人の友人に囲まれた小さなウェディングを計画していた。しかし、寒さ・強風・強雨の悪天候に見舞われてしまった。計画を変更し、滞在していたホテル内で挙げようとしたがホテル側は対応できず、カップルは落胆し、どうすればよいかわからずにいた。

そんな中、友人の1人が「近くのスターバックスで挙げよう」と提案。なぜなら、カップルの2人はスタバでお互いバリスタとして働いていて知り合ったからだ。実際、ウェディングに来ていた友人の数人もスタバのスタッフだった。

2人はスターバックスでバリスタとして働いていて知り合った

「基本的に、ウェディングの参加者はスタバでの仲間、仲の良い友人、フォトグラファー、そして私たちの子供たちだったんです」とプライラーさんはハフポストに話した。「だから、近くのスタバで短い式を挙げさせてもらえるか問い合わせるのは、理にかなっていました」

スタバでプライラーさんのマネージャーをしている友人がいくつか電話をし、マウント・プリーサントにある店舗のマネージャーのベン・ペインさんと連絡が取れた。

「ペインさんは、喜んで手助けをしてくれる、そして1時間ほど欲しい、と話してくれました」とプライラーさんは話す。

「もうみんな諦めかけていたんです。せめて、ホテルが空いている会議室でも使わせてくれると思っていたから。でも結局、それはこの大計画の一部にはなりませんでした」

店舗のスタッフは、床にボルトで固定されたテーブルを外すなどして、式をするスペースを作った。

そして、スタバの店舗でマネージャーをしているペインさんの電話での会話の一部を聞いていたのが、そこで働いていたメリッサ・ビグナーさん。なんと、地元のウェディング・マガジンでエディターをしており、自ら手助けを名乗り出た。

スタッフが家具を移動し、フロアを掃除し、クリスマス・デコレーションを下げる間、ビグナーさんはイベントプランナーをしている友人に電話をし、バージンロードの絨毯やマクラメ編みの装飾などを手配した。そしてビグナーさんの車に置いてあったバリ風アンブレラも、当日の悪天候に対応し、会場をお洒落に変えた。そしてもう1人のバリスタのエルフィー・キャッセルさんは式中の音楽のため、帰宅してチェロを取りに行った。

友人が結婚式を司った。新婦たちと、彼女たちの4人の子供たち

そしてどうにか、全てが形になった。美しく変わったカフェの一部で、2人の新婦は誓いを交わした。

「これらの人たちは私たちと会ったことさえないのに、私たちのウェディングを救うために手を尽くしてくれました」とマングさんは話した。

「彼らの手助けのおかげで、私たちの人生の中で一番マジカルな日が実現しました。それは私たちにとってかけがえのないことです」

挫折はあったけれど、友人や見知らぬ人たちの助けによって、2人は忘れられない1日を過ごすことができた。

「すべての偶然がうまく合わさったんです」とマングさんは話す。「私たちの親友と、スタバの素晴らしい仲間たちのおかげで、本当に今までで最高の1日となりました」

2人の素敵な写真はこちら↓

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

「スーパーヒーロー」が病気をなくす? ゲノム解析が作り出す“健康経営“とは

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「健康でいたい」と多くの人が思うものの、世の中には健康や医療の情報があふれ、どれが信頼できて、自分に合ったものなのか分かりづらい。

また、会社の健康診断の前後数日は健康に気をつけていても継続できない……という人も少なくないだろう。

そんな悩みを解決する糸口が、「遺伝子情報全体を示すゲノム情報とビッグデータの活用にある」と話すのは、NTTライフサイエンスを立ち上げ、トップに就任した是川幸士氏だ。

是川氏は、企業が社員の健康をサポートする「健康経営」という考え方に着目し、「社員が健康に働ける環境を整えることで、企業の価値は上がる。鍵を握るのは、よりパーソナライズされたデータにある」と語る。

NTTグループが見据える、健康の未来像とは?

是川幸士(これかわ・こうじ) 入社以来、法人営業部門のシステムエンジニア、企画業務に従事。人事や経営企画などを経て、大手自動車メーカーとの合弁子会社社長などを歴任。NTTのR&D成果の医療・健康分野におけるチーフプロデューサーとしてグループの事業化を推進。2019.4よりNTTグループのメディカル事業統括、2019.7よりNTTライフサイエンス社の社長に就任。

―― まず、NTTライフサイエンスがめざす未来像を教えてください。

社員の健康状態が向上することは、企業にとっても大きなメリットがあります。社員が健康的に働くことが、企業の業績にもつながっていくでしょう。

同時に、少子高齢化が進んでいる日本社会にとっても、多くの人が健康でいることは、医療費や社会保障費の適正化というメリットをもたらします。

とはいえ、私たちで難病問題まですべてを解決するというのは現実的な目標ではありません。私たちが着目しているのは、生活習慣病です。予防医学の観点から、生活習慣病のリスクを低減させることをめざします。

「健康診断前後だけ気をつける」から脱却するには?

私もそうですし、皆さんも思い当たる節があるかもしれませんが、会社で健康診断をやりますよね。その前後数日は、食事やアルコールを少し節制したり、数値を見て「気をつけないといけないよなぁ」と思ったりするでしょう。

しかし、数日経てば元どおりで、食事も普通に食べています。せっかく、検査をしてもこれではもったいない。

生活習慣病は、文字通り生活習慣が関係している病気ですから、日々の生活そのものを正していかないとどうしようもないのです。

現状、社員にとっては、起こり得るリスクが“自分事”になっておらず、健康意識が高まるような仕組みはあまりありません。健康診断や人間ドックは受けるものの、継続的な行動変容にはつながっていないことからも明らかです。

企業にとっては、健康経営の重要性は頭では理解しているものの、具体的に何をやったら良いのか分からず、従業員に定期健康診断は実施しているものの、集まったデータの活用には至っていない。

そこで、私たちが提供する「健康経営サポートサービス」では、起こりうるリスクをより自分事として捉えてもらうために、健康診断などのオプション項目に遺伝子検査をつけています。あなたのゲノムデータから導き出された情報ですよ、と個々人にどのようなリスクが高いのか、よりパーソナライズされた情報を渡せるシステムです。

健康的な生活を「続ける」方法って?

―― しかし、現実の人間はそこまで合理的な判断を下せるわけではない。健康に気をつけろ、食事を節制しろと言われても、ついつい食べてしまう。

そうです。だからこそ「行動変容」まで促したいというのが、サービスの狙いです。例えば、自身の健康情報にアクセスできるアプリを導入し、生活習慣の見える化をめざします。ばく然と健康に良い生活をめざしましょう、減量しましょう、運動しましょうというだけではなく、アプリを介して、定期的に科学的に裏付けがある健康情報を送るということを考えています。

「リスクを知るだけでなく、行動変容まで促したい」と語る是川氏

1人では持続しないダイエットでも、友達と一緒なら頑張ることができるという人もいると思います。その場合は、職場の仲間同士でダイエット情報を共有することで、モチベーションを維持するといった仕組みも考えられます。

逆に1人で黙々とダイエットに取り組みたいという人には、定期的にメッセージを送ったほうが効果的かもしれない。

流行している言葉を使えば、ナッジ(※英語でひじで軽く突くことを意味する。 行動経済学では行動を変化させる工夫のこと)をどう提供できるかがポイントです。情報の提供の仕方一つで、人間の行動は変わります。

健康に働きたいという目標のために、個人にとって最適化された行動を促す仕組みを作っていきたい。それは、今の技術で十分に可能だと思っています。

ゲノム情報でどこまでリスクが分かる?

―― ゲノム情報の解析でどこまで生活習慣上のリスクが分かるものでしょうか。

よく聞かれることなのですが、私たちはゲノム情報の解析ですべてを理解できるとは思っていません。研究が進行中の分野でもありますし、今の段階ですべてが分かるわけではないと言われればその通りです。

私たちは、NTTグループも含めた社員の健診データと生活習慣が分かる問診のデータを経年で蓄積しています。これは個人に関する文字通りのビッグデータです。そこにゲノム情報を掛け合わせることで、生活習慣と病気の関係について、より理解が進むのではないかという仮説を持っています。

これは私たち単独ではできないので、大学とも提携して、研究を進めていく予定です。

ゲノム情報は「究極の個人情報」、流出リスクは大丈夫?

―― ゲノム情報は究極の個人情報と言われています。流出した時のリスクはこれまで以上に高い。情報の取り扱いが問われてきそうです。

その通りです。例えば「この人は病気のリスクがありそうだから…」として人事面などで不当な扱いがあっては絶対にいけません。これまでの健康診断でも同じですが、あくまで、個人のデータは個人のものであり、他の誰にも開示しません。自分の情報にアクセスできるのは、自分だけです。

私たちは医療系の研究者とも組んで、ビッグデータ解析を進めますが、研究利用も含めて、ゲノム解析については必ず本人の同意をとります。本人同意がないデータは研究に使いませんし、同意がない限りゲノム解析もしません。法的にも他の個人情報と同等の扱いが求められており、厳重な管理に努めます。

「集めたデータは万全のセキュリティ対策を敷く」と話す是川氏

集めたデータについても、取り扱うことができるのはNTTライフサイエンス社のみであり、社内でも万全のセキュリティ対策をします。

たとえNTTグループの企業であっても、データそのものにアクセスすることもできません。あえて新たに会社を設立したのもこの取り組みのためで、会社そのものがファイヤーウォールなのです。

研究などについては、統計処理を施した後のデータを使います。本人が特定されるようなことはありません。

健康のお手本「スーパーヒーローモデル」って何?

―― 資料の中に「スーパーヒーロー」モデルを探りたいという言葉がありますね。何やらものすごいプロジェクトになりそうな気がしますが……。

すごい言葉ですよね(笑)。これは病気にかからない究極の人間を探すという話ではなく、ゲノム解析上は生活習慣病リスクが高いのに、病気になっていない一群を「スーパーヒーロー」と定義しています。

ゲノム解析上は生活習慣病リスクが高いのに、病気になっていない一群を「スーパーヒーロー」と定義している

この人たちはいったい、どのような生活を送っているのか。統計的なデータから研究を進めて、モデルとして構築したいということですね。

「あなたは〇〇病のリスクが高いことがわかりました」というだけでは、健康経営のサポートとは言えない。スーパーヒーローモデルを作ることができれば、あなたのリスクは高い、でもあなたと同じようなリスクを抱えていた「スーパーヒーロー」は〇〇な生活を送ることで、病気のリスクを回避していますよ、という具体的な情報をお伝えすることができるわけです。

単なるデータ解析では終わらせず、行動変容を促すためにはこうしたモデルも必要だと思っています。ビッグデータの強みは、医学的に因果関係を証明しようとすると何年もかかるようなものであっても、事実として何が起こっているかを知ることができる点にあります。

研究者が注目しているのは、健康な人から大規模なデータを集めることができるという点です。特定の疾患がある人について、ゲノムレベルの検査、研究はありますが、今回のプロジェクトは違います。私たちのデータから、社会に貢献できる何か新しい発見が生まれるのではないかと期待しています。めざすのは、10年、20年後に健康であることです。

(取材・文:石戸諭 撮影:鈴木保浩 編集:中田真弥) 


ドアラ、契約更新で「2%アップ」…ってどのくらいあがるの?

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プロ野球セ・リーグの中日ドラゴンズのマスコット「ドアラ」

プロ野球セ・リーグの中日ドラゴンズの人気マスコットキャラクター「ドアラ」が12月18日、名古屋市内の球団事務所を訪れ、契約更改に臨んだ。消費増税分の2%上乗せでサインした。

中日ドラゴンズの公式Twitterは、ドアラが契約交渉のために球団事務所に訪ねた様子を投稿。普段はユニフォーム姿のドアラも、この日ばかりはグレーのスーツに、球団カラーのブルーのネクタイを合わせた。両手の指先はピンと伸ばされ、契約交渉に臨む前の緊張感が伝わる。

その投稿のわずか7分後には、球団公式Twitterが球団旗の前に座り、契約更改後の会見に臨むドアラの姿も投稿。交渉がスムーズに進んだことが伺える。会見には、集まった多くの報道陣の姿も見えた。

スポーツニッポンによると、ドアラは現在の年俸である「食パン600グラム」に、消費増税分の2%を上乗せした「食パン612グラム」で球団側と合意した。

会見でドアラは、2020年元日にユーチューバーデビューすることも表明した。日刊スポーツによると、選手へのインタビューやファンからのリクエストに応える動画に挑戦するという。

中日ドラゴンズは2019年シーズンを5位で終え、7年連続のBクラスに沈む。12月17日には、2020年度のスローガンを「昇竜復活」とすると発表した。新人ユーチューバーデビューのドアラともども、中日ドラゴンズは2020年を飛躍の一年にできるか。

伊藤詩織さん「有意義なこと」 山口敬之さん「 納得できない」。判決後の記者会見で、それぞれが語ったこと(詳報)

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ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者の山口敬之さんから性行為を強要されたとして慰謝料などを求めた訴訟で、東京地裁(鈴木昭洋裁判長)は山口さんに慰謝料330万円の支払いを命じた。

判決が言い渡された12月18日、伊藤さん、山口さんはそれぞれ記者会見で、判決をどう受け止めたかについて語った。

 

「素晴らしい結果になったと思う」

司法記者クラブで記者会見する伊藤詩織さん

会見の冒頭で、判決への受け止めについて「実はどう結果を受け止めていいのかわからない状況です」と率直な思いを語った伊藤さん。

時折笑みを浮かべながら、「今回の民事訴訟というのは素晴らしい結果になったと思います」と振り返った。

伊藤さんは、2015年4月、警視庁に準強姦容疑(当時)で被害届を提出した。山口さんに対していったんは逮捕状が出たものの、逮捕直前で取りやめとなり、書類送検されたが翌2016年7月に嫌疑不十分で不起訴となった。

その後、2017年5月に検察審査会に不服を申し立て、司法記者クラブで会見を開いた。しかし、検察審査会でも「不起訴相当」と判断され、今回の民事訴訟に踏み切った。そして、今回の勝訴に至った。

初めてこの場で会見をさせていただいた時は、その後どうなるのか、自分の私生活を含めてどうなるのかわからないまま、性暴力被害者が置かれている状況を改善したいという思いで会見をしました。今まで、こういった被害者が声を上げるということはなかったので、日本の皆様にはすごく異色に映ったのではないかと思います」。

伊藤さんは当時の心境についてそう語る。

判決では、山口さんの行為について、「酩酊状態にあって意識のない原告に対し、合意のないまま本件行為に及んだ事実、意識を回復して性行為を拒絶したあとも体を押さえつけて性行為を継続しようとした事実を認めることができる」として不法行為と認定された。

伊藤さんは、「刑事事件ではどういったことが精査されてあの結果が出たのか、わからないことだらけだったんですが、今回は裁判官の方からお答えをいただけたので、私にとっては有意義なことでした」と語った上で、友人や家族、支援者らに感謝を述べた。

山口さんが控訴する意向を受けた心境を聞かれると、伊藤さんは「このプロセスや、新しく知った情報をふまえて今後できることがたくさんあると思う。一つのピリオドではあるけれども、新しくスタートしたい」と思いを語った。

判決では、伊藤さん側の主張が認められたかたちだが、山口さんは判決後に「法に触れる行為は一切していない」と改めて強調している。

山口さんに対して伝えたいことを聞かれると、しばらく宙を見上げ、「彼を前にして、どういった気持ちなんだろうといろいろと考えていたんですけど...」と切り出した上で、「自分自身に向き合って」と思いを語った。

やっぱり求めるのは、こういったことをオープンに議論できる場所なので。願うのは、彼自身が自分に向き合っていただいて、今後こういったことが起きないように、どんな構造的な問題があるのか、どんな状況でそういうことが起きるのか、一緒に向き合っていただいたら嬉しいなと思います。性暴力やセクハラは、パワー関係がアンバランスなところで起きる。最近では就活のセクハラについても言われていますけれども、いかにパワーが関わっているかということにも向き合っていただいて、一緒に解決できるようになったら嬉しいなと思います

会見では、性暴力サバイバーに伝えたいことについても質問が及んだ。

伊藤さんは、涙を流しながら「自分に言い聞かせていることなんですけれど、自分の真実を信じてほしい」と語りかけた。

Believing your truth, believing my truth. あそこに行かなければよかったんじゃないかとか、自分自身を責めてしまったりしますが、本当の傷というのは自分自身が一番よくわかっているので、そこを信じてほしい。どんなことが周りにあっても、それはその人の真実であるから

2017年5月の会見以降、詩織さんは自著『Black Box』を出版したり、メディアの取材や講演登壇に積極的に応じたりするなどして、声を上げ続けた。

しかし、「アクションはいつでも起こせるから、まずは生き延びること」が大事だと声を強め、「元気になったら歩みを共にしてほしい」と呼びかけた。

私は周りに支えてくれる人がいたから、なんとか生き延びられた。尋問の前は自分の命を失うような体験をしました。それくらい大変なことです。もし今日このメッセージを聞いてくれたら、今日まで生き延びてくれて本当にありがとう。元気になったら一緒に私と歩みを共にしてほしい

 

「納得できない」

記者会見する山口敬之さん

山口さんは、伊藤さんの会見に先立って午後2時から都内で記者会見。記者会見には、北口雅章弁護士と文芸評論家の小川榮太郎さんらが同席した。司会は月刊Hanadaの花田紀凱編集長が務めた。

判決では違法行為が認められたが、山口さんは「私は法に触れる行為を一切していない」と会見で一貫して強調した。

そして、「客観的証拠に基づいて伊藤さんの主張の矛盾点を複数主張したが、我々の主張が間違っているという事実認定もないままほぼ無視されている。高等裁判所での裁判を通じて強く訴えていきます」と、控訴する方針であることを明らかにした。

また、今後「客観的証拠」を一般の人にも判断してほしいとして、現場から立ち去る伊藤詩織さんが映っているホテルの防犯カメラの映像や、伊藤さんのカルテについて公開する方針であるとした。

また、山口さんは、検察審査会の議決について触れ「この可能性について全く触れられていないのは、判決において私のもっとも不服とする部分の一つです」とした。

質疑応答では、いったん出された逮捕状が直前で取りやめになったことについても質問があった。「もみ消しを図ったのでは」とする疑惑について報道されていることについて、「(逮捕状が)出ていたかどうかすら知らない。天地神明にかけて(取り下げを)誰かに頼んだということはない」とした。

今回の民事裁判の判決では、名誉毀損を訴えた山口さん側の反訴は棄却されている。

しかし、山口さんは現在、逆に伊藤さんを虚偽告訴と名誉毀損で刑事告訴しているとして、集まった記者に対して「伊藤詩織容疑者と書いていただきたい。捜査に着手していれば容疑者ですから」とも訴えた。

また、小川さんらを記者会見に同席させた理由について「たくさんの政治家やメディアが彼女(伊藤さん)の側について、たくさんの報道を世界中でしている。小川さんは花田編集長と一緒に、私と全く無関係なところで、現場に行ったり、裁判資料を独自に読み込んでくださって、伊藤さんは嘘をついている、矛盾があると月刊Hanadaに寄稿してくださった」とした。

記者からは、「就活セクハラ」が問題になっていることに触れ、同意の有る無しに関わらず、就職活動のために会っていた伊藤さんと性行為を行ったことに道義的な責任をどう考えるのかという質問もあった。

山口さんは「(私は)犯罪行為をしていない。そこをクリアにしない限り、私の当時の行動が正しかったかどうかという立ち入った発言をしても誤解を生むと思います。ただあえて言えば、適切ではなかったと思っています。道義的な部分をここで掘り下げられてもお答えしません。わたしの、犯罪ではない行動を、あなたに詳細に謝罪するつもりもないし、ここで弁明する気もありません。違法でないことについて、ここで今議論することが適切でない。私は自分を守るために、犯罪者であるというなら別ですが、そうでないなら、お答えしません」とした。

伊藤詩織さんの勝訴、海外メディアが続々と報じる「ブラックボックス打ち破る」

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ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者の山口敬之さんから性行為を強要されたとして損害賠償を求めた民事裁判で、東京地裁が12月18日、山口さんに330万円の支払いを命じる判決を言い渡したことについて、アジアや欧米の海外メディアも詳しく伝えている。

フランスのAFP通信は「日本人ジャーナリストが注目の#MeToo裁判で勝訴」という見出しで速報した。

伊藤詩織さん勝訴を伝えるAFP通信

イギリスのBBCは、伊藤さんは、性的被害を発言しにくい国で#MeToo運動のシンボルになっていると伝えた。証拠不十分で事件化されなかったことを指摘した上で、強制性交を取り巻く環境について触れた。日本では強制性交の被害のわずか4%しか警察への被害届がでない(2017年)点をあげ、伊藤さんが警察へ相談した際に、人形を使ってレイプの現場を再現させられ「セカンドレイプ」のような扱いを受けたことに触れている。

BBC TWOは、過去に伊藤さんを数ヶ月間密着取材し、性的暴行をめぐる日本の刑事法制の問題点を取り上げたドキュメンタリー番組“Japan’s Secret Shame” (日本の秘められた恥)を2018年6月放映している。

 

BBCは速報で伝えた

 ロイターも同様に「日本のジャーナリストが強制性交を訴えた注目の裁判に勝訴」と速報した。

ロイター通信の記事

ワシントンポストは、日本では女性が声を上げにくい環境であるものの、伊藤さんの活動は、日本の#MeToo運動を加速させ、全国に性暴力や性差別の撲滅を訴える「フラワーデモ」のうねりを巻き起こしたと、伝えた。
さらに、(男性が管理職に多く)男性支配が強く古典的な日本のメディアは、
伊藤さんが刑事では不起訴になったことから、彼女の訴えを積極的に擁護することはなかった、と指摘した。

ワシントンポストの記事

 ■中国メディア「ブラックボックス打ち破る」、韓国も詳報


伊藤さん勝訴のニュースは中国でも注目を集めた。
検索最大手「百度(バイドゥ)」では“伊藤詩織勝訴“が検索ワードランキングのトップ10入り。

現地メディアが日本の報道を引用する形で伝えた。

このうち、共産党系メディアの環球時報(デジタル版)は伊藤さんについて「日本で初めて名前や身分を明かした上で性被害を訴えた女性」と紹介した。

また、ニュースサイト澎湃新聞は「日本司法システムのブラックボックスを打ち破った」と題して記事を掲載。伊藤さんについて「民事訴訟は時間を要し、また辛いものだったが、伊藤さんは訴訟を進めつつ女性の権益のために活動を続けてきた」と評した。

中国では、手記「Black Box ブラックボックス」の中国語版「黒箱」が刊行(初版3万部)されていた。

 

百度に掲載された記事

 韓国の全国紙のハンギョレ新聞東亜日報は「日本の#MeToo運動のシンボルが勝訴」と伊藤詩織さんを見出しでそれぞれ取り上げ、詳報した。

東亜日報の記事

「生きててよかった」判決後、伊藤詩織さんが支援者を前に語ったこと

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ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者の山口敬之さんから性行為を強要されたとして慰謝料1100万円の損害賠償を求めた民事訴訟。

12月18日の判決で、東京地裁は「酩酊状態で、意識のない伊藤さんに対し、合意がないまま性行為をした」などとして、伊藤さんの主張を認め、山口さんに慰謝料など330万円の支払いを命じる判決を下した。

山口さんは「内容にはまったく納得できません」として控訴する方針を示している。

支援者を前に語る伊藤詩織さん。PTSDで苦しんでいることを告白し、「死ななくて良かった」と涙ながらに語った。

判決後に行われた集会で、伊藤さんは、多くの支援者らを前に感謝の言葉を語った。

「結果を聞いても嬉しいという感情は湧かなくて。いい結果が出て良かった、というのが自分の中で処理できなかったんですが、まわりの人が涙を流してハグをして喜んでいる姿を見て、本当にすごいことなんだと。同じようなケースが起きた時に大きな意味があると、この1日でじわじわと実感してきました」

 

語られた両親への思い「どう思っていたんだろう」

法廷には、伊藤さんの両親も来ていたという。10月の結審では父親が傍聴していたことを明かしていたが、今回は初めて母親も同席した。

性被害を受けたと訴えた会見を開いてから、民事訴訟の判決に至るまでの2年間の歩みに思いを馳せながら、両親への思いも明かした。

「両親も法廷に見えました。初めて母が法廷にきたんですけれども、法廷の一番後ろ側の席に座っていました。冒頭に2分間の映像撮影があったが、その間は沈黙しなければいけないんです。静かな時間があり、目の前には山口氏と相手側の弁護人がいて...山口さんは下を向いていたんですけれども、彼を見ながら、彼はどんな思いで民事裁判を過ごしてきたんだろう。同時に『両親はどう思っていたんだろう』と、この長い2年間を思い返す2分間となりました」

伊藤詩織さん

「死ななくてよかった。生きててよかった」

性暴力のサバイバーに対する思いも語った。

伊藤さんは、今でもPTSDに苦しめられているという。「この2年間、死ななくて良かった。生きててよかったと思います」と涙ながらに告白。

「今後同じようにアクションを起こす方がいらっしゃったら、どうかみなさんサポートをしてください。裁判所側でも改善できることはたくさんあると思います。私も、自分の経験をふまえて改善に繋げられればと思っています」と呼びかけた。

伊藤さんは、今回の民事訴訟を起こした意義について、「新たな証言や公になったことがいくつかあった」として「このプロセスこそが本当に意味のあること」と強調している。

結審間際に、新たな証言者の申し出もあったという。

「自分自身がどういう人間でありたいか、ということをすごく考えてきてくださったんだなと感じました。いろいろな方が『自分だったら』と、自分ごととして向き合ってくれる人が多くいてくれたことが希望でした」と思いを込めた。 

 

判決「被告の供述は不合理というほかない」 

判決などによると、山口さんは当初、「あなたのような素敵な女性が半裸でベッドに入ってきて、そういうことになってしまった」などと伊藤さんに説明していたが、その後、伊藤さんから呼ばれて自分から伊藤さんのベッドに移動したと供述を変えていた。

判決では、「被告の供述は不合理というほかない」と山口さんの主張を退けた。

伊藤詩織さん。判決直後、東京地裁前に集まった報道陣や支援者に囲まれ、感極まった表情で結果を報告した。

また、裁判では、事件後の2015年4月6日、伊藤さんから山口さんに送ったというメールの内容についても双方の主張が争われた。

「無事にワシントンに戻られたでしょうか?」などと山口さんを気遣うような内容のメールで、山口さん側は「強姦の加害者に発信する言葉掛けとして通常あり得ません」と主張した。一方、伊藤さんは「全く何もなかったように過ごすのが自分の身のためなのではないかと思った」と証言していた。

判決では、「同意のない性交渉をされた者が、その事実をにわかに受け入れられず、それ以前の日常生活と変わらない振る舞いをすることは十分にあり得ること」と指摘。メールから伊藤さんが性行為に同意していたと推認することはできないとして、山口さん側の主張を退けた。

伊藤さんの弁護団の村田智子弁護士は「性犯罪の被害にあった被害者の心理について非常に理解されていると感じた」と語った。

 

「性被害を受けたと声を上げることは公益目的」

判決では、山口さんの反訴についても検討された。

山口さんは2019年2月、伊藤さんから名誉を毀損されたことで社会的信用や仕事を失ったとして、慰謝料1億3000万円や、謝罪広告の掲載を求めて反訴した。裁判では、山口さんの訴えも合わせて審理されていた。

判決は、伊藤さんが山口さんから受けた性被害を告発した内容について、「摘示する事実は真実であると認められる」と指摘。

「(伊藤さんが)自らが体験した内容やその後の経緯を明らかにし、広く社会で議論することが、性犯罪の被害者を取り巻く法的、社会的状況の改善につながるとして公表したことが認められる。公益をはかる目的だと認められる」として、山口さんの名誉を棄損する行為ではないと判断し、請求を棄却した。

判決後に記者会見する山口敬之さん

山口さん「法に触れる行為は一切していない」

一方、山口さんは、判決後の午後2時から都内で記者会見。記者会見には、北口雅章弁護士と文芸評論家の小川榮太郎さんらが同席し、司会は月刊Hanadaの花田紀凱編集長が務めた。

山口さんは、判決に対して「まったく納得できない」とした上で、「私は法に触れる行為を一切していない」と一貫して強調。

小川さんも「今回、民事訴訟でこのような結果になったことについては、私も社会の個人として非常な憂慮を持ってこの問題を今後も追求していく他ないという決意を固めました」と語った。

伊藤さんが警視庁に準強姦容疑(当時)で被害届を提出したのは2015年4月。いったんは逮捕状が出たものの、逮捕直前で取りやめとなり、山口さんは翌2016年7月に嫌疑不十分で不起訴に。伊藤さんは検察審査会に不服申し立てをしたが、検察審査会も「不起訴相当」と判断した。

山口さんは「客観的証拠に基づいて伊藤さんの主張の矛盾点を複数主張したが、我々の主張が間違っているという事実認定もないままほぼ無視されている」として、控訴する方針であることを明らかにし、次のように主張した。

今回の判決については、一方的に伊藤さんの主張だけが根拠なく、事実真実と認定されてしまった。

 

これについて、私がこれまで2年間沈黙している間に、様々な報道が国内や海外で、伊藤さんだけが出る、もしくは伊藤さんの主張だけを一方的に載せる、という報道、風評が世界中に流布されると私は思っておりませんでしたので、今回の判決にも何がしかの影響を与えたのではないかなと、分かりませんけれども、私としては残念に思っております。

 

私もずっと記者をしておりましたから、取材に応じない人、記者会見をしない人の主張については何を考えているのか分からないので、沈黙自体が結果的なマイナスにつながった可能性が否定できない以上、今後は法廷の外でも、こういう主張をしていかなければならないと思っています

「マイノリティが働きやすい職場は“みんな“が働きやすい職場」 LGBTQの取り組みから考えるダイバーシティ&インクルージョン

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左から、ラッシュジャパンの安田雅彦さん、「虹色ダイバーシティー」代表の村木真紀さん、日本航空の百田寛さん

最近は、多くの企業が人事戦略として掲げる「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」という考え方。

ハフポスト日本版が10月に企業に対して行なったD&Iに関するアンケートでは、多くの人事担当者が「社内におけるD&Iの浸透」に課題を抱えていることが分かりました。

D&Iの取り組みは、社内で後回しにされがち…。

経営者や役員、そして社員にどうやってD&Iの考え方を伝えていけばいいんだろう。

ハフポスト日本版は、社会の課題を伝えるだけではなく、当事者と一緒に、読者のみなさんと一緒に課題解決に寄り添うメディアでありたい。

そんな思いから、私たちは「D&Iを1から考えるイベント」の2回目を12月上旬に開催。LGBTQ(性的マイノリティ)への取り組みという観点から、専門家とLGBTQ施策に力を入れる先進企業を招き、D&Iを社内で浸透させるためのヒントを探りました。

「会社で言いたくても言えないこと」を1人ずつ発表するワークショップも行なった。

マイノリティへの施策って、当事者以外の社員にも「良いこと」あるの?

「マイノリティへの施策って、当事者以外の社員には正直関係ないんじゃないの…?」

D&Iやマイノリティへの施策が「二の次」にされがちな背景には、そもそもマジョリティのこんな本音もあるのではないか。

そんな声に対して「マイノリティが働きやすい職場はマジョリティにとっても働きやすい職場」と話すのは、企業や行政に向けてLGBTQに関する研修やコンサルタントを行う特定非営利活動法人「虹色ダイバーシティ」代表の村木真紀さんだ。

村木さんによると、LGBTQへの取り組みがうまくいっている職場には「ある共通点」があるという。

それは、社員同士のコミュニケーションが活発で、職場で笑顔が多いこと。

LGBTQに限らずマイノリティへの配慮がある職場は「多様な社員の存在」が認められている環境だ。そんな環境では、社員が職場で悩みや意見を言いやすく、またハラスメントや差別的な言動があっても誰かが指摘できる。それが円滑な人間関係や働く意欲、会社のリスク回避にもつながり、ひいては生産性の向上にも貢献する。

マイノリティへの配慮が結果的に、マジョリティの社員にとっての働きやすさ、企業の持続的な発展につながっていくのである。

「LGBTQ施策の目的は『働く人が幸せであること』。それは『良い職場作り』の目的と一緒だと感じています」と村木さんは話す。

村木真紀さん

LGBTQ施策を浸透させるためにはどうしたらいい?先進企業にズバリ訊いた!

一方で、目先の業務や利益に追われる現場に、いかにD&Iの重要性伝えていくかが一番の課題。言葉や制度だけが存在して、行動や意識が伴っていない職場も多いかもしれない。

そんな課題に自社の視点からアドバイスしたのは、LGBTQへの先進的な取り組みで知られる日本航空株式会社株式会社ラッシュジャパンの人事担当者。業界や規模、風土も異なる2社だが、意外にも共通したアドバイスが返ってきた。

◾︎会社のスタンス”を社員に明確に示すこと 日本航空

2019年8月に日本で初めて「LGBT ALLY チャーター」を運航させた日本航空。

Ally(アライ)とは、LGBTQ当事者に共感し、寄り添いたいと思う人たちのことを指す。

人財戦略部人財戦略グループでグループ長を務める百田寛さんは「弊社も全社的な理解という点では、まだまだ発展途上」と前置きした上で、理解浸透のためには「会社のスタンスを社員に明確に示すこと」が重要ではないかと話す。

チャーター便の運航や全国各地のプライドイベントに出展するのは、もちろんLGBTQへの理解促進を図るための社外への発信という側面もあるが、社内に向けた発信という意味合いも大きいのだという。

「『私たちはLGBTQアライの企業だ』というスタンスをはっきり示すことで、社員一人ひとりのLGBTQへの意識も高まります。当事者の社員には『この会社で働き続けられるんだ』と安心してもらうことができる。対外的な活動を、社員の意識向上や自信、活躍につなげていく。そういうサイクルでLGBTQ施策を回していきたいなと思っています」

百田寛さん

◾︎「我々は何者であるか」をビジネスとして社会に発信する ラッシュジャパン

「全ての人がハッピーであるべきだ」という根本思想から、LGBTQの人権を社会的課題として位置づけ、店頭でお客様に直接訴えてきたラッシュジャパン。根底には「ビジネス上の利益よりも倫理観を優先する」という姿勢がある。

社内のLGBTQ施策についても、戸籍上同性間のパートナーを「配偶者」とみなす社内制度や、性適合手術を受ける際も傷病休職と同様の取り扱いとするなど先進的な制度を設けている。

人事部部長 安田雅彦さんは「弊社では、ほぼ全ての社員がLGBTQについては同じ理解だと思っています」と自社のD&Iの浸透に自信を持つ。

「『我々は何者であるか』を社会にはっきり打ち出しているからこそ、その思想に居心地の良さを感じる社員が残っていくし、集まってきます」安田さんはそう話す。

左:百田寛さん、右:安田雅彦さん

「体験・体感」がアライの輪を広げる

企業がD&Iやマイノリティへのスタンスを明確にし、社員一人ひとりに「自分ごと」としてD&Iの重要性を理解してもらう。理解浸透はこのように進んでいくが、社内に「アライ」を増やしていくという過程でもある。

安田さんは「マイノリティが発信するより、当事者ではないマジョリティが『自分ごと』として発信した方がより伝わりやすいのではないか」と、マイノリティの「小さな声」を大きな「うねり」に繋げていくのはアライの役割だと話す。

LGBTQの当事者である村木さんも「当事者でないからこそ主張できることがある」とアライの重要性を訴える。

「当事者は自分の主張が否定されたとき、同時に自分自身を否定されたような気持ちになるんですね。でも、アライならばそこは傷付き過ぎず、強く、冷静に発信できるという面はあると思います」

村木真紀さん

それでは、どのようにアライの輪を広げていけばいいのだろうか。

見えてきたのは「体験・体感」というポイントだ。

日本航空では、社員から各地のレインボープライドのボランティアを募る中で、徐々にアライの輪が広がってきたという。

プライドイベントのブースでは、来場者に「好きな制服をきてもらう」取り組みを行う。性別を気にせず、パイロットや客室乗務員の制服を嬉しそうに着ている人々の笑顔が印象的だという。

「みなさん『本当はこれを着たかったんだ!』ってすごく喜んで下さるんです。見ている我々もとても嬉しいですし、そういったポジティブな感情からアライの輪が連鎖しているのかなと感じます。やはり、実際に当事者と関わり合いを持つことで“自分ごと”として考えやすくなるんだと思います」百田さんは話す。

「東京レインボープライド」で東京・渋谷の街をパレードする人たち。LGBTQとその支援者が参加し「生と性の多様性」を訴えた

百田さん自身も、人事担当になった直後の2019年4月、初めて東京レインボープライドに参加。D&Iに取り組む自身のマインドにも「変化」があったという。

「東京レインボープライドは公園全体から力が湧き出るような、とてもエネルギッシュな2日間で…。すごく刺激を受けました。一方で『このエネルギーは残りの363日、どこに行ってしまっているんだろう』という疑問も残りました。『それでは、普段から社員がエネルギーを発散できる場を作ることで、LGBTQ施策により積極的に取り組むことができないか』。そんな課題意識が、今の活動の原点になっています。そんな風に『パチン』と、社員一人一人の心にスイッチが入る瞬間が大事なのかなと思います

村木さんは、アライの社員に「自分とLGBTQの同僚や部下、家族などの“原体験(ストーリー)”」を語ってもらうことも、周囲の共感を呼びやすいと話す。

「ぜひ当事者に会いに行って、実際の声を聞いてみてください。知識だけではなく、マイノリティと生身の人間として接し、彼らが身近にいると感じる方が大事だと思っています。そうすると、アライが発する言葉にもパワーが出てきて、より伝わりやすくなります」

イベント終了後は、参加者と登壇者で懇親会も行なった

ハッピーな組織を作るのは、一人ひとりのハピネス

イベントからは「職場におけるD&Iの浸透」に関する様々なヒントが見えてきた。

一方で、「あなた」の組織でD&Iを浸透させるのは、経営者や上司、人事部だけではなく「あなた自身」でもあることをぜひ忘れないでほしい。

自分がハッピーに働かないと、周りをハッピーにすることはできない。皆さんももっと自分のハッピーを追求してみてください」ラッシュジャパンの安田さんは最後にこんなメッセージを送った。

ダイバーシティとは決してマイノリティだけを意味するのではなく「あなた自身」。そして、あなたが自分らしくハッピーに働くことが、D&Iだ。

だからこそ「自分が幸せに働くために」、ぜひ職場のD&Iに向き合ってみてほしい。

ハフポスト日本版はこれからも「D&Iを1から考える」イベントを読者の皆さんと作っていきます。 

LGBTQは「普通じゃない」に違和感を感じた高校生。一緒に考えたいとワークショップを開催

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東京都・渋谷区にある渋谷教育学園・渋谷中学高等学校で12月13日、LGBTQの人たちについて知るためのワークショップが開かれた。

ワークショップを企画したのは、同校に通う高校2年生の杉本絢香さんと遠藤可奈子さんだ。

杉本絢香さん(左)と遠藤可奈子さん

二人は同級生らがLGBTQの人たちを「普通じゃないよね」と言うのを耳にして違和感を感じたという。

それは、正しい知識がないから生まれる偏見ではないだろうか、と思ったという遠藤さんと杉本さん。

同じ学校に通う、中学・高校生と一緒に、LGBTQの人たちについて学ぶワークショップを設けた。

知って理解しようとすることが大事

ワークショップには、同校に通う中学1年〜高校2年生までの約30人の学生たちが参加した。

遠藤さんと杉本さんは、「LGBTQのことを考えるときに、“普通”という言葉が出てきて、普通という概念とはどういうものなのかということを考えられさせることがある」と説明。

「普通じゃない、不自然だ、ホモがやばいといった言葉が、いじめや職場でのパワハラに繋がっている」と、“普通”の決めつけが、LGBTQの人たちの生きづらさを生み出しているのではないかと訴えた。

ワークショップには渋谷区の長谷部健区長と女子サッカークラブ「スフィーダ世田谷FC」所属の下山田志帆選手もゲストとして参加した。

長谷部区長は、2015年に渋谷区でスタートした「同性パートナーシップ制度」の制定に大きく関わり、渋谷をLGBTQの人たちが暮らしやすい街にするための活動に力を入れてきた。

しかし長谷部氏自身も、高校生の時まではLGBTQの人についての知識がなく、「(ゲイやトランスジェンダーのような)男の子がいたら、言葉で傷つけていたかもしれない」と明かす。 

渋谷区の長谷部健区長

 

LGBTQの人たちへの考え方が変わったのは、20歳の時にアメリカに旅行した時だったという。旅先で同性愛者の人たちに声をかけられたり、男性同士が手をつないで歩いているのを目にしたりして、自分の知らない世界があるということに気が付いた。

日本で社会人になった後も、LGBTQの当事者と知り合い一緒に働く機会があった。自分の身近にはいないと思っていたLGBTQの人たちは、よく周りを見たらすぐそばにいることを知ったという。

そういった経験から「もしLGBTQの人たちについての知識がなかったら、まずは彼らのことを知り、そして理解しようとすることが大切だ」と話す。

違いを力に変える社会にしたい

下山田選手は、性の多様性が受け入れられていない日本のスポーツ界で、生きづらさを感じているアスリートがいることを語った。

下山田選手は、生まれついた体の性別は女性で、好きになる相手も女性。よく「LGBTのどれなんですか」と聞かれるが、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーのどれにも、100%当てはまるものはないと感じている。

自分の心の性は、「今はどちらかというと男性寄りだけど、女性に寄ることもある」と説明する。

「自分をどこかのセクシュアリティに当てはめなければいけないという気持ちが強くて悩んだ時もあったんですけれど、今は性が揺れ動いているのも自分だなと受けとめて生活しています」と話す。

下山田選手が図で説明した、自分の4つの性。「身体の性」と「好きになる性」はともに女性で、「表現する性」は男性寄り。 「心の性」は流動的で、現在はやや男性寄りだが、女性寄りになることもある

下山田選手が2017年から約2年間プレーしていたドイツは、同性同士の結婚が認められている国。LGBTQの人だけに限らず「みんな違うところがある」と一人一人が理解していて生きやすかったという。

一方、日本のスポーツ界では「男らしさ」「女らしさ」を求める風潮が強く、自分らしくいられない不安や恐怖を抱えているLGBTQのアスリートが多いと下山田選手は話す。

「日本ではみんながチームとして同じ方向を向くことで強くなれる、という空気感が強く『違いを力に変える』ということが、今のスポーツ界はできてないなと思います」

下山田志帆選手

ディスカッション

話を聞いて、学生たちはどんなことを感じたのか。身近にある問題点や、自分たちにできる解決策を、ディスカッション形式で考えた。 

グループにわかれて、身近にある問題点と自分たちができる解決策を考えた

若い彼らが、身近にある問題として挙げたのは、無意識に使っている言葉や服装など、日常の中に潜む差別や生きづらさだ。

身近にある問題

・ホモ、ゲイなどのフレーズが、悪口やからかいの意図で使われていることがある

・「女子力高い」「力仕事は男」「男は泣かない」という日常会話で使われている言葉が、無意識に差別をしている

・男女別にわかれている制服など、男性はこういう服を着る、女性はこういう服を着るという空気感が、特にトランスジェンダーの人たちにとって生きづらい世の中にしているのではないか

解決策として、多くの学生が「教育」を挙げた

そして、その問題を変えていくためにできることとして、多くのグループが答えたのが「教育を通して変えること」だ。

幼い頃から体に違和感を感じたり、「男の子らしさ」「女の子らしさ」を苦しく感じたりする子供もいるので、幼稚園や保育園からLGBTQのことを教えるのが大事だと指摘する声もあった。

解決策としてできること

・LGBTQについて教え、考えさせるような授業を義務教育の段階から組み込む

・童話や絵本に、LGBTQをテーマにした内容のものを増やす

・トイレの表記を、男性は青で女性は赤で色分けしない

・固定概念にとらわれないように、自分の言動に気をつける

一人一人から変化は始まるのかも

遠藤さんと杉本さんは「当事者や活躍している人たちの話を聞くことで、ネットで調べたことだけではわからないことを知ることができた」と話す。

ふたりの「普通じゃない」という言葉への違和感からスタートした今回のワークショップ。参加者を募った時には、誰も来なかったらどうしようと心配していたが、「ここまでたくさん来てくれると思わなかった、嬉しい」と、喜びの表情を浮かべる。

「来てくれた人の心に何か引っかかることがあって、これから意識しようと考えたり、何か新しいことを学べたのであれば、この企画は成功したのかなって思います」

今後はワークショップを、校内だけではなく学校以外の場所にも広げていきたいと考えている。

スマートフォン、電気自動車…今、化学メーカーの技術が至るところで用いられています。

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化学メーカーが開発するのは、あらゆる製品の基盤となる素材。さまざまな領域で技術革新が進む時代、担う役割もより大きなものになっていると言えるだろう。

こうした中、国内大手4社による新素材開発に向けた連携もスタート。グローバルで激しさを増す開発競争を見据えた取り組みも進んでいる。化学メーカーを取り巻く業界動向とともに、どういった企業が募集を行なっているのか見ていこう。

化学メーカーの最新動向。進む、自動車領域への注力、大手企業の開発連携。

化学メーカーはあらゆる製品の製造に欠かせない存在と言って良いだろう。今、スマートフォンに電気自動車など、革新的な製品が続々と誕生。至るところで化学メーカーの技術は用いられている。

近年とくに活発となっているのが、自動車関連の素材開発だ。自動車は世界的に排気ガス規制が厳しさを増しており、燃費改善が急務となっている。重要となってくるのが車体の軽量化。これを叶えるために自動車メーカーでは、素材の転換を推し進めているというわけだ。

とくに自動車業界で進んでいるのが、「金属素材から樹脂系素材へ」という流れ。

中でも注目が集まっているのが、化学メーカー各社が開発を進めている炭素繊維。鉄とくらべて重さは4分の1程度、さらに10倍の強度を持つと言われている。

大手自動車メーカーによる導入も進む。2018年3月には米自動車メーカー「ゼネラルモーターズ(GM)」が、ピックアップトラックのモデルチェンジ車に帝人と共同開発する炭素繊維複合原料を採用すると発表した。

加えて化学メーカーが自動車づくりから関わるケースも出てきている。2018年9月には、東レや住友化学などが主要な部材を炭素繊維などの合成樹脂に置き換えた電気自動車の試作機を公開した。

現在、樹脂系素材の使用率は1割強と言われているが、切替は確実に進んでいくとされる。今後さらに、自動車領域における化学メーカーの存在感は高まっていきそうだ。

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大手化学メーカーで進む開発連携の動き

今、化学メーカーではAIやビッグデータなどテクノロジーの活用により、開発スピードが加速。欧米・中国企業を中心に巨大再編の動きもあり、開発競争は激しさを増している。

こうした世界的な潮流の中、日本の大手化学メーカーも開発連携の動きがある。2017年、化学メーカー大手4社は新素材の事業化に向け、共同研究を始めると発表。それぞれの知見を持ち寄り、開発スピードを早めていく方針だ。

連携によってどのような素材が生まれてくるのか。世界の製造業にどういったインパクトを与えていくのか。注目していきたい。

化学メーカーの求人動向 / 営業職・技術職・管理部門

「化学メーカー」の特徴としては、海外における売上比率が高いということが挙げられる。海外売上が半分を占める企業も珍しくない。そのため、世界のGDP成長に合わせ、売上拡大も期待できそうだ。

加えて、国内の少子高齢化による市場縮小による影響が少なく、将来性がある業界といった認知も広がっている。ここが転職先として「化学メーカー」が人気の理由だと言えそうだ。

それでは、営業職・技術職・管理部門…それぞれの求人をみていこう。

営業職系

三菱ケミカルの「ディスプレイ開発営業」募集が見受けられた。主に海外のエレクトロニクス関連企業に対する営業を手掛けていくようだ。海外拠点や研究所・事業所などと連携し、ビジネスプランの策定に関わっていくという。

さらに、売上高が約1兆5000億円を誇る総合化学メーカーの求人も見受けられた。顧客としては世界の自動車Tier1メーカーやアメリカを中心としたIT企業など。ユーザーは世界に広がっており、グローバルなフィールドで営業・マーケティングを担う人材が求められているという。

同業界における経験を問わないというケースもあり、異業界出身者にとって注目の求人も多いと言えそうだ。

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管理部門系

積極的にグローバル展開、M&Aなどを仕掛けている企業も多い。経理・人事など、バックオフィスとしてもスケールの大きな挑戦ができるといえそうだ。

たとえば、経理職においては、国内トップクラスの総合化学メーカーにおける募集が見受けられた。基礎化学、石油化学、情報電子化学、健康・農業関連事業、医薬の5分野で事業を展開。海外展開にも注力している。

さらに、世界の液晶用ガラス基板において、世界生産量の20%を供給する日本電気硝子が人事職の募集を行なっていた。海外に12拠点を持ち、グローバルなフィールドで人事として活躍できる環境もあるようだ。

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技術系

大手総合化学メーカーにおける募集が多く見受けられた。

たとえば募集が行なわれていたのが、東レにおける「炭素繊維複合材料の材料開発・プロセス開発」に携わる技術職。さらに、従業員数が3万人を超える総合化学メーカーによる「AI技術を用いた材料開発」研究職の募集も見受けられた。 ※求人情報より抜粋

さらに、大手空調機器メーカーによる「複合材料の研究・開発職」の募集も見受けられた。化学事業領域拡大を進めたいという狙いもあるようだ。

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「男女格差」が日本で埋まらない本当の理由。フランスの元家族・子ども・女性の権利省大臣が明かしたこと。

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インド、イタリア、カナダーー。3カ国で暮らす、3人の女性の「選択」と「闘い」を描き、本国フランスで100万部突破した小説『三つ編み』。

“フェミニスト小説”といわれる本作を、「男性学」の視点から読み解くイベントが、2019年10月に東京・田原町の書店「Readin’ Writin’ BOOKSTORE」で行われた。 

トークしたのは、『三つ編み』日本語版の解説を担当し、著者にインタビューしたフランス在住のライター・髙崎順子さん。ゲストは男性学研究を専門とする社会学者の田中俊之さんの2人。

(左から)フランス在住のライター・髙崎順子さん、男性学研究を専門とする社会学者の田中俊之さん

小説に描かれた男性像をきっかけに、“理解ある優しい男性”の盲点や“上位層の男性”以外は生きづらい日本の社会、そしてフィクションが与えてくれる可能性について、前編に続き、『三つ編み』を通して見える日本社会の問題点についてふたりが語り合った。

関連記事》「人間が好きならフェミニストなはず」フランスで100万部突破「三つ編み」の著者、日本を思う。

レティシア コロンバニ (著),  齋藤 可津子 (翻訳)『三つ編み』(早川書房)

理解はあるが、現状は変えたくない男たち 

髙崎:『三つ編み』はまったく異なる人生を歩む、3人の女性を描いた小説です。

カースト最下層の運命から娘を逃そうとするインドの母親。代々受け継がれてきた家業をこよなく愛するイタリアの16歳の少女。3人の子を育てながら弁護士としてキャリアを着実に積み上げるカナダのシングルマザー。

実は、『三つ編み』に登場する男性は、すごくソフトに描かれているんですよ。彼らは女性を攻撃はしてこない。でも、社会や秩序の象徴でもある。

たとえば、インドで暮らすスミタの夫は、理解がある男性として描かれています。幼い娘に教育を受けさせようとするし、妻が激怒しても殴ったりせずに話を聞く。

でも、「じゃあここから抜け出しましょうよ」という妻の提案は受け入れられない。なぜなら社会とはこういうものであり、自分はそこで生きる人と容認しているから。(この夫は)現状肯定の象徴なんです。

満員電車を容認するしかない人々と同じように、スミタの夫もカーストの最下層身分に生まれた人生を「こういうものだ」と諦めている。 

イタリアの少女の父親、カナダの弁護士の上司もそう描かれています。彼らは女性を攻撃しない。でも、彼女たちが枠組みから外れたときに、手を差し伸べることもしない。

田中:理解はあるけれども、秩序を乱そうとする行動は否定するんですよね。

人は、現状が現状であるというだけで、一定程度正しいと評価する。そういう心理が働いてしまうことは、社会心理学でも確認されている知見です。

日本社会は戦後に民主化が進みましたが、社会がちょっと乱れるといつも家父長制が出てくるんですよ。

1969年に石原慎太郎の『スパルタ教育』という本がベストセラーになったのですが、それには基本、奥さんと子どもはぶん殴っていいと書いてある。妻子をバンバン殴って、真ん中にどんと座ってりゃ、お父さんはそれでいいんだよ、と。

戦後、夫婦は対等だと建前で言ってはいても、ハリボテの裏には旧態依然の思想が蠢(うごめ)いている。

だから、男女雇用機会均等法ができても、「じゃあ一般職と総合職を分けよう」というごまかしの発想が出てくるんですね。「現状の秩序を維持していくために、いかに細工や根回しをするか」という発想になってしまうのが日本社会です。

 

男のつらさが、女のつらさに絡め取られる 

髙崎:私は『三つ編み』を読んで、女性としてはすごく清々しかったんですね。と同時に、男性の登場人物たちが気の毒だとも強く感じました。

女性たちは苦しい状況の中でも戦い、前を見ながら自分の居場所を見つけていく。でも男性たちは、イタリアの章で登場する移民の彼以外、そこから出ようとする動きが書かれていないんです。彼らも抑圧の下にあるのに。

田中:日本で男性学が発展しない理由もそこにあります。男性は社会で優位な側にいることが多いわけですから、彼らが抱えている問題の出し方が難しいんです。 

議論を進めようと「男の人も困っていることがあるんですよ」と言うと、「いや、女性のほうが困っています」と絡め取られて終わってしまうことも多々あって。確かに、女性のほうがより困っている立場にあることは自明なのですが。

髙崎:以前に、女性活躍支援に力を入れている企業の方とお話する機会があったんです。「なぜ御社は女性活躍支援の部署をつくっているんですか?」と聞いたら、「だって国の方針ですよね」という答えが返ってきた。

しかもその担当者は女性だったんですが、なぜかと問われて真っ先に出た言葉が「国の方針」。

彼女には自分ごととしての切実な意識がないんだな、と驚いてしまいました。ダイバーシティも同じで、単なるお題目でしかない企業がたくさんある。

先日、フランスで女性の権利を管轄していた元家族・子ども・女性の権利省大臣のローランス・ロシニョール上院議員に取材したんです。

そのときに「日本が政治の場で女性問題を改善していくためのヒントが、フランスにありますか」と質問したんですね。そしたら一瞬戸惑うような答えが返ってきまして。

要約すると、フランスの男女格差問題は、男性が持っている権利を女性が持っていない点にあるんですね。男性は皆、ほぼ同じ権利を持っている。だから女性側にもその分の権利を与えて、格差を改善しましょう、という構造になっている。 

ところが、日本では男性間でも権利を持っている人と、持っていない人の格差がある。だから女性の権利を拡大・回復しようとしても、「男性が持っている権利」の目安をどこに置いていいのかが見えにくいのでは、と……。

田中:なるほど。そういった側面は大いにあると思います。 

日本の男性の権利や選択の自由という観点から、僕も最近発見したことがあるんです。『地上』という農業雑誌をご存知ですか? 農業の担い手やJA職員を対象とした雑誌なのですが、先日、その雑誌でインタビューされたんです。

そのときに「飲み会に行くも行かないも、結婚するもしないも個人の自由だ、と先生はおっしゃいます。そこは共感しますが、農家は土地を継がないといけない。結婚して子どもをつくらないと土地を継いでいけないし、地域の飲み会に行かないと、水害が来たときに『あいつは飲み会来ないからな』という理由で、自分の畑だけ守ってもらえないこともあるんです」という話をされました。

そう言われて初めて気づいたのですが、僕が研究している男性学って第三次産業に従事する男性の男性学なんですね。 

でも日本には、農業や漁業といった第一次産業を生業にしている人はたくさんいる。飲み会に行かないことが、死活問題になる社会もあるんです。自分の視野の狭さを思い知らされました。

髙崎:そういった乖離はありますね。言論の世界で積み上げていくものふわふわ感と、現実社会とのあいだには必ず乖離がある。私自身も痛感しています。

 

男性優位社会の上位層以外は、全員が苦しい日本

髙崎:ちょっとプライベートな話になるのですが、私がこの問題を考える時の出発点には、個人的な経験があります。

私は、活発で成績が良く、小さい頃から「あなたが男だったらよかったのに」と言われ続けてきました。大人になっても、ずっと。

一方、私の周囲にはいつも、穏やかでちょっと不器用な男性たちもいました。彼らはことあるごとに「男のくせに」と言われ続けていたんです。

私が「男だったらよかったのに」と言われる横で、彼らは泣くことも許されなかった。 

だから私の中には、女であることの苦しさと、男であることの苦しさが、いつも合わせ鏡になって目の前にあります。私が苦しい時、私の横の男性たちもまた、苦しかったんです。

私が『三つ編み』という小説に救われたのは、そこなんですね。男性は敵ではないし、彼らのつらさも滲み出ている物語だから。そして今の日本のシステムで苦しいのも、やはり女性だけではない。

日本的資本主義では、男性優位社会の上位層の人たち以外は、全員が苦しいんですよね。 

だから、このシステムを変えていこうと思ったら、苦しい人たちみんなが手を繋がざるを得ないというか、どうにか繋いでいけないか?と考えてしまうんです。

田中:東京で子育てをしていると、健康で体力のある成人男性用につくられている街なんだな、ということを至るところで実感します。

東京って、合理的に働いて生産性を上げる企業の論理が貫かれてる都市ですよね。

僕、ベビーカーを押して電車に乗ったら、「ベビーカーで入ってくんなよ」と言われたことがあるんですけど、こういう街で子どもがたくさん生まれるわけがないですよね。 

経済が成長しているうちはそれでよかったかもしれないけど、経済がしぼんで何もなくなったら、恐ろしいことになるでしょうね。

髙崎:それと通じていると思うのが、「男は精神的に子どもだから」という日本ならではの言説。

そしてその言説を、当然のように言う人は男女双方にいますね。そのうち子育てをしたがらない男性、子どもが嫌いな男性の中には、「隣りに本物の子どもがいたら、席が奪われるかもしれない」という恐れを根底に持つ人がいる気がします。

田中:日本で最初に男性学を始められた伊藤公雄先生という方の『男性学入門』(1996年)にもそういう話が書かれています。

日本人の男性には、ママが3人いる。自分の母親と奥さん、それからスナックのママ。日本の男は3人のママにヨチヨチとお世話してもらいながら生きている、という。

なぜそうなるかというと、会社を守ることが自明の理である、という教育を受けて大人になるからです。学校を出たらすぐ就職する、弱音は吐かない、途中で辞めてはいけない。(ママに支えられながら、)「男らしさ」が社会を駆動するのが基本原理になっている。

今の日本のように、右肩上がりの成長が望めない社会でその原理を信じて生きていくのは、かなりつらいことですよ。

 

この世界を、次世代に渡せる?

(写真はイメージ)

田中:だからこそ『三つ編み』のような物語の力ってすごいんじゃないかな、と改めて思っていて。まったく違う国、違う社会で生きる人々の物語が、言葉と想像の力できゅっとひとつに束ねられている。物語の形式だからこそできることですよね。

髙崎:この物語がなぜフランスで生まれたのかという話に戻ると、フランスではやっぱり婦人解放運動=フェミニズムだからなんですよ。

ヒューマニズム(人道主義)の中にフェミニズムがあることが、社会の前提としてフランスでは受け入れられている。男性にとっては、自分の母親や姉妹、恋人、娘の問題であり、「このままの世界を次の時代に残せない」という意識、当事者性があるんですね。 

田中:僕もそこに尽きると思います。誰だって火中の栗を拾いたくない。

けれども「この社会を次世代はに渡せない」という感覚、これを持てるかどうかでしょうね。

いろんなものが漏れ出しているにも関わらず、とりあえずの応急処置を繰り返して現状を維持してきた。それが今の日本社会です。先延ばしにするほど、爆発は大きくなるとわかっているのに。

ただ、「既存の秩序で俺は勝ちたいんだよね」と思っている人に、この感覚は届かないんですよ。 

髙崎:そう考えると、女の人はやっぱり動きやすいのかな、と思います。残念ながら、男性はそういう既存の秩序の「型」にはまるように、そこから抜けると不安になるように、教育されてきたから。

一方で、女性はその既存の秩序の「型」には入れないけれども、社会で家事や育児のようなソフト面を担ってきた。制度を動かす力はないけれども、システムを回していく動力であり続けてきた。 

だから、自由であるとも言える。『三つ編み』のスミタのように、女性が一人逃げたところで社会は変わらない。でも、全員が逃げることができたら?         

良くも悪くも既存の秩序でルートが与えられなかった女性は、そこから外れちゃいけないという精神的縛りも男性より薄い。だからこそガツンと大きく踏み出せるときもある。

それも『三つ編み』のメッセージのひとつかな、と。思います。

 

絶望的な現実を直視しないと、次には進めない 

田中:男女差別などの現実の話をすると、「もっと希望を持てる話はないですか?」とよく聞かれるんです(笑)。でも下手に希望が持てる話なんかしないほうがいいと僕は思っています。

なぜなら、「若い世代のジェンダー観は、いい変化が起きているんですね。じゃあ我々は変わらなくてもいいよね」ということにもなりかねないからです。現状はこれだけひどいという事実を直視しない限り、次には進めない。

『三つ編み』のような小説は、読むのが正直つらいですよね。でもそこを直視しないと、やっぱり希望は生まれない。僕は、適当ないい話でバランスを取る必要はないと思っています。

髙崎:まずは、現状認識から、ですね。物語や海外の情報は、そのための入口になる。 

田中:去年、うちのゼミでディズニープリンセスの研究をやった学生がいたんですよ。自分より無力なものに助けてもらった白雪姫、シンデレラを経て、ラプンツェルのように、最近のプリンセスが強くなってきているというのは有名な話ですよね。 

ただ、それと比例するように、男性のキャラがバカに描かれるんですよ。

髙崎:『アナと雪の女王』もまさにそうですよね。女の子を主人公に置くために、ひとつのエピソードとして、男性がやや愚かに描かれる。

田中:男同士のケンカを見た女性が、「男って本当バカね」と肩をすくめる。そういう構図は過渡期の今は仕方ないことなのかもしれません。でも、これから先はそういう「男を貶めることで、女を持ち上げる」以外の描き方も出てきてほしい。

小説や映画を共有しあって、意見交換する機会は普段の生活でもとても大事なことだと僕は思っています。

自分や社会を客観視するための方法は、データをいかに正しく読み込むか、だけじゃない。

フィクションのどこに感情移入するか、どう感じたかという意見を交換することで、新しい視点や客観性が生まれることもある。物語に正解はないですから。

髙崎順子(たかさき・じゅんこ)

1974年生まれ。フランス在住ライター。得意分野は子育て環境と食。東京大学文学部卒業後、出版社に勤務。2000年渡仏し、パリ第四大学ソルボンヌ等で仏語を学ぶ。ライターとしてフランス文化に関する取材・執筆の他、各種コーディネートに携わる。著書に『フランスはどう少子化を克服したか』『パリのごちそう』『パリ生まれプップおばさんの料理帖(共著)』 

田中俊之(たなか・としゆき)

1975年生まれ。大正大学心理社会学部准教授、博士(社会学)。専門は男性学。内閣府男女共同参画推進連携会議有識者議員、厚生労働省イクメンプロジェクト推進委員会委員・渋谷区男女平等推進会議委員。『男性学の新展開』、『男がつらいよ──絶望の時代の希望の男性学』、『〈40男〉はなぜ嫌われるか』、『男が働かない、いいじゃないか!』など著書多数。

 

(取材・文:阿部花恵 編集:笹川かおり

あぶり出されるこの国の生きづらさ〜『「れいわ現象」の正体』を読んで

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参院選/支持者を激励する山本代表

気がつけば今年もあとわずかで終わろうとしている。

2019年を振り返る時、真っ先に浮かぶのが夏の参院選だ。「れいわ旋風」「れいわ現象」とも言える熱気に私もいつの間にか巻き込まれていて、重度障害を持つ議員が二人、誕生した。

昨年の今頃、重い障害を持つ議員が二人も誕生するなんて、そのうち一人は全身麻痺で人工呼吸器を装着しているなんて、いったい誰が想像しただろう。国会がバリアフリー化されるなんて、国会の委員会質問をその場で文字盤で作成するなんて、その間、速記が止まるなんて、何もかもが前代未聞のことだらけで、「当事者」が国会に入るインパクトに改めて驚いている。

そんな中、この数ヶ月は『GQ』や『ニューズウィーク』などの雑誌の表紙をれいわ代表の山本太郎氏が飾り、12月に入ってからは「れいわ本」の出版が続いている。私もライターをつとめた『#あなたを幸せにしたいんだ 山本太郎とれいわ新選組』(前回の原稿で書いています)は12月13日に集英社から出版。発売の翌日にすぐさま増刷がかかる売れ行きとなっている。また、12月9日には、朝日新聞記者である牧内昇平氏が書いた『「れいわ現象」の正体』(ポプラ新書)が出版されている。

「いったい誰が、『れいわ新選組』を支持したのか?」

帯にこう書かれたこの本をさっそく買い求め、ページをめくり始めてすぐ、涙が溢れたのには驚いた。

著者は決して山本太郎の支持者ではない。むしろともともとは「『脱原発』ばかり言うタレント政治家」「『一人牛歩』など派手なパフォーマンスを好む」人物として「毛嫌いしていた」という。

そんな牧内氏が妻から勧められて街頭演説の動画を観るところからイメージが変わり始める。それは神戸・三宮の繁華街の動画だ。

「自信を奪われてるだけですよ。自分は生きてていいのかって……。生きててくれよ! 死にたくなるような世の中やめたいんですよ!」

聴衆にそう語りかける山本太郎氏の動画に、牧内氏は「途中から目頭が熱くなった」という。山本太郎氏の話に胸を打たれた背景には、牧内氏が経済部所属で労働問題の記事を多く書いてきたこともあるだろう。過労死やパワハラ死の遺族に取材してきたのだ。命を奪われた人々、その家族と接してきた経験は、大きい。

そうして牧内氏は、れいわ新選組の支持者たちの取材を始める。

それはそのまま、底が抜けたようなこの国で喘ぐ人々への取材だった。

ここ20年ずっと、アルバイトや契約社員、派遣社員として働いてきた50代の男性は、「あなたの生活が苦しいのをあなたのせいにされていませんかってことですよ」から始まる山本太郎氏の演説に「僕のことだ。この人は僕に話している」と涙が溢れたという。それまでは、山本太郎が大嫌いだった。が、「目に涙をためて叫んでいるのを聞いたとき、彼への見方が180度変わりました。僕と同じ目線で話してくれる政治家を、初めて見つけた気がしました」と語る。5万円の貯金から、1万円を寄付したという。

母子家庭で、貧困とともに育ったという20代の女性は、「どうして若い人たちに借金させてまで学校で学ばせるの? 教育受けたいって若い人たちに、教育受けさせるようにするのが国の役目じゃないですか。将来給料いくらもらえるかわかんないっていう状態で、どうしてそんな人たちに300万も400万も500万も借りさせるような状況にできるんですか?」と山本太郎氏が目に涙をためながら語る姿を見て、「え、私たちのために泣いてくれてるの?」と信じられない思いだったという。

現在は大学を休学して派遣社員として働く日々。もともと日本学生支援機構から月6万4000円の奨学金を借り、アルバイトをしながら大学生活をしていた。しかし、母が納期までに学費を払えず、退学となってしまったのだ。派遣社員として働き、復学に必要なお金を貯めるのに一年半。その間も月に1万5000円の奨学金返済がのしかかる。苦労してやっと大学に再入学したものの、半年後、また学費が払えないことが判明。休学扱いにしてもらい、学費のために派遣で働いている。

「洋服はすべて古着。ひどい雨でもバスには乗らない。シャンプーは格安のものでがまんする」「毎日早朝に起きて昼食用の弁当をつくる。疲れた朝、『たまにはコンビニで買ってすませたい』と思うが、おにぎり2つとお茶で最低でも300円。その300円が出せない」

そんな彼女だが、「れいわ祭」に参加し、千円札一枚を握りしめて寄付の列に並んだという。

それ以外にも、様々な立場の支持者が登場する。付き合っている彼女の子どもが筋ジストロフィーを患っている男性。元ネトウヨで自民党支持だった共産党員。LGBTのエリート会社員女性。

本書では多くの声が紹介されている。

「毎月1千円ずつ、合計3千円寄付しました。10年以上前に個人で会社を立ち上げましたが、倒産するかもしれません。生活が苦しいので、本業とは別に、夜は食品仕分けのアルバイトをしています。生活に直結する消費増税がいちばんの問題です」(九州地方、50代男性)

この言葉に象徴されるように、4月から7月の投票日までの間に4億円集まった寄付金は、少額の寄付が積み上がったものだった。数千円、数百円という寄付金で4億円集まる政党などれいわ新選組だけだろう。

そして本書には、「れいわ新選組」が選挙期間中、メディアでほとんど取り上げられなかった舞台裏が記されている。

「原稿が載らない!」のだ。せっかく取材しても、支持者にどんなに話を聞いても掲載されない。特定の党の支持者の動きだけを紹介するのはどうか、というような批判をされてしまうのだ。しかもこの時点でのれいわ新選組は、議員は山本太郎氏一人だけで政党要件も満たしていない。記事が載らないことに苛立っていた牧内氏は、「れいわ祭2」の森達也氏のスピーチに、痛いところを突かれたと思ったという。以下、森氏のスピーチだ。

「メディア、テレビ各局来てます。おそらく新聞も各紙来てると思います。これ、いつ放送するんですか? いつ掲載するんですか? 選挙終わってから? 何のために? 選挙終わってから記事を読んで、あるいはニュースを見て、悔しい思いをさせたいから? 人々に。だから今報道しないんですか? 意味が分からない」

「勘弁してくれ」という気分になった牧内氏は、「れいわ祭2」もそこそこに新橋をあとにしたという。「これ以上この場にいることができなかった」から。正直な人である。

連日メディアが多くいるのにちっとも報道されない。支持者たちも時に苛立っていたあの現場には、「報じたい」と忸怩たる思いを抱えていた記者もいたのだ。そのことが知れただけでも、嬉しい。

さて、本書はそんな「れいわ現象」を描写しながらも、この国の「生きづらさ」に照準が当てられている。牧内氏は、まえがきで以下のように書いている。

「わたしは『れいわ現象』の背後にあるものを正確に言い切る自信がある。それは、現代社会を覆う『生きづらさ』である」

また終章では、以下のように書く。

「政治家に『生きててくれよ!』と叫んでもらう必要があるほど、いまの世の中は生きづらくなっている、ということだ」

考えてみれば、「どんな人だって生きていていい」とか「誰にだって価値がある」だとか「死にたくなるような社会は嫌だ」とかって、ものすごく普通のことだ。普通のことだったはずなのに、私はここ数年を振り返っても、日常でその手の言葉を聞いた記憶がない。逆にメディアから、人々の会話から耳にするのは「役に立たないと生きている価値などない」「生きていたくないんだったら無差別殺人事件など起こさずに勝手に一人で死ね」「国に迷惑をかけるな」「迷惑かけるくらいなら死んでくれ」というような言葉だ。

少し前、数年ぶりに会った「勝ち組ロスジェネ」の知人は、「ダメな人間は一生ダメ」「世の中には必要な人間と必要じゃない人間がいる」なんてことばかり話していて、聞いているだけで胸が苦しくなってきた。その人自身が、そういう言葉が当たり前の世界で生きているのだろう。それはどれほど、生きづらい日々だろう。弱みなんて決して見せられない世界。そんな関係性。

この本では、山本太郎氏の言葉が生きづらい人々の心にどう響いたかが丁寧に描かれている。が、牧内氏は先に書いたように支持者ではないし、れいわ新選組を手放しで絶賛しているわけではまったくない。「山本太郎氏への疑問」についても書いている。

「山本氏を盲信せず、必要があれば議論によって軌道修正を求め、場合によっては見限るのも、支持者たちに課された仕事だろう」。これには多くの人が共感するだろう。

ちなみに、最近の山本太郎氏をめぐる出来事として、馬淵澄夫議員と共催する消費税減税研究会の勉強会講師に高橋洋一氏を呼ぶという一件があった。これに対しては私も「なんで?」と激しい衝撃を受けたが、当然、意見させて頂いた。この方向は違うのでは。そう思ったら、まずは伝えればいいと思うのだ。それが自分にできることで、山本太郎氏は「人の話を聞く」人物だと思っている。もし今後、山本太郎氏が「聞く耳」を持たなくなったら、その時こそが応援をやめる時だとも思う。が、そう書きながらもなんとなく違和感がある。

「応援をやめる」とか「支持をやめる」とか、なんだか他人事のようで上から目線に思えるからだ。「山本太郎をどう評価するか」なんてこと以前に、自分が何をすべきか、何ができるかが大事なのだ。

「お任せ民主主義」では何も解決しない。ヒーローなんて絶対に現れないし、完璧な人間なんていない。誰かに期待してすべてを託すほど自分が無力だとも思っていない。そして山本太郎氏は「完璧さからはほど遠く、いろいろ前のめりすぎて時に間違える人間」だということは、国会議員になる以前から見ている人にとっては深く頷くところだろう。しかし、そのたびいろんな人がいろんな意見を言い、変わってきたのも事実である。

ということで、「れいわ現象」からこの国を掘り下げた一冊に、改めてこの国の「生きづらさ」が浮かび上がったのだった。

*本記事は2019年12月18日のマガジン9掲載記事『第506回:あぶり出されるこの国の生きづらさ〜『「れいわ現象」の正体』を読んで。の巻(雨宮処凛)』より転載しました。

スマホ依存を抜け出す13の方法

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スマートフォンは何処までも私たちの暮らしを便利なものにしていく。知りたい情報はインターネットで難なく手に入り、世界中の人と簡単に連絡を取り合える。「アプリがなんでも解決する」なんて言われるほどだ。

しかし、同時に私たちはスマホを肌身離さず持ち歩き、依存している。頭を使わずにInstagramやTwitterのタイムラインを眺めて時間を浪費しており、多くの人がスマホをチェックしていないと不安を感じているというスマホの使用は脳内の化学成分に影響を及ぼすという研究結果もある。精神的な健康を悪化させ、生産性を低下させ、他者との関係をこじらせ、繋がりを作る上で足かせになるなど、その影響は様々だ。

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スマホの使用を控えることでメリットが得られることは明白だが、その道のりは決して楽なものではなさそうだ。

「文字通り、生活の『全て』について回るものですから、いっきに使用を絶つことはあまり賢いやり方ではありません」臨床心理学者でアラバマ大学の補助准教授、ジョシュア・クラポー氏はハフポストに語った。

「数日、もしくは長い間スマホから離れるのが良い方法と考える人もいますが、それは行動する上で日々、毎時間、毎分の習慣に大きな困難を及ぼします」

しかし恐れることなかれ。生活習慣に少しずつ取り入れることのできる手段もある。今回、ハフポストはクラポー氏やその他の専門家に、スマホの使用量を軽減させる手段について聞いた。

 

スクリーンタイムを確認する

iPhoneのスクリーンタイム機能を使えば、スマホ使用時間の記録を、その内訳と合わせて確認するできる。この機能を使う事で、実際に自分が「何にどれだけの時間を割いているのか」を可視化することができ、効率的に変化を起こすことができる。

調査によれば、私たちは平均して1日に少なくとも3時間、スマホを使用している。「『自分はそんなに使ってないよ』と思うかもしれませんが、ぜひ確認してみて下さい」。そう語るリザ・キンドレッド氏は、著者で講演者、且つ瞑想やマインドフルネスについてワークショップ等を行う「マインドフル・テクノロジー」の創立者でもある。「きっと自分の数値に驚きますよ」と彼女は続けた。

もしiPhoneを使っているなら、「設定」からスクリーンタイムを確認し、通話やメール、SNS、音楽、映画など、自分が何にどれだけの時間を割いているのかを確認することができる。更にこの機能は、カテゴリーやアプリごとに、使用内容の内訳を細かく表示することもできる。週ごとの通知数や、スマホを開いた時にまず、どのアプリを開いているかを確認することもできる。他の機種にもデジタル・ウェルビーイングという似た機能がある。

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通知を完全オフにする

「何かと通知が多すぎるんです」と語るのは、生産性の向上に関する専門家、マーク・ストラクゼウスキー氏。彼は、通知の大部分をオフにすることを提唱している。取り分けSNSの通知をオフにした方が良いそうだ。

メッセージやカレンダーのリマインダー機能、クレジットカード詐欺に関する警告通知などは問題ない。しかしその他の通知は一般的に、生産性を低下させ、実際の生活における他者との繋がりを阻害するという。

更に「通知機能が、スマホ依存を悪化させるドーパミンを増加させる」という学説もある。「通知が来る度に反応し、大真面目に確認する必要はないんです」名誉教授でカリフォルニア州立大学、ドミンゲスヒルズの元心理学科長でもあるラリー・ローゼン氏はそう語った。通知を最小限に抑えることでこのサイクルを断つことが期待できそうだ。

 

スマホ画面をグレイスケールモードにする

根本的に、スマホは持ち主の使用を促すための仕組みで成り立っており、その中には色味も含まれる。そこで、画面を全て白黒にする「グレイスケール・モード」に切り替えることで、多くの人がスマホの誘惑が緩和されたという。

「スマホから色を消せば、即座にスマホの誘惑は弱体化します」 インターネットとテクノロジー依存センターの創立者でメディカル・ディレクター、且つコネチカット大学医学部で精神医学の臨床学准教授を勤めるディビット・グリーンフィールド氏はハフポストにそう語り、「白黒の画面なら、やたらと興味をそそられて、スクロールすることは無くなりますよ」と続けた。

 

 アプリを整理する

視覚的な誘惑を乗り越える術として有効なのは、やはり整理することだろう。

「ホーム画面にあるものを制限して、つい開いてしまうようなアプリはフォルダーに隠すんです」とキンドレッド氏は言う。この方法で誘惑するものをある程度は抑止できるそうだ。 

キャリア・コンサルティング会社、PurposeRedeemed.comの創立者、クリストファー・K・リー氏の友人は、アプリを2ページ目のフォルダーに隠すこのコツを取り入れているそうだ。 

「確かにまだアプリは開けますが、その前に一手間を挟むことで、精神的な距離が生じるんです」とリー氏は語った。「特に目的もなくアプリを開く場合、それを開くまでに面倒な手間が入ることで、無駄なアプリ利用の頻度を下げることが出来ます。彼は今、スマホに無駄な時間を割くことが減りました。視界からアプリが消えることで、頭からもその存在が消えるのです」  

また、パソコン上のSNSなど、頻繁に開いては引っ切り無しに使ってしまうアプリを、思い切って完全に消去してしまうのも手だ。

 

バイブレーションをオフにする

「バイブレーション機能は生産性を阻害します」とストラクゼウスキー氏は言う。「スマホを伏せてマナーモードにしておけば大丈夫だと思っている人もいますが、もしバイブが鳴ったら、すぐにスマホを開くことは明白です」 

特定の通知のみをバイブにし、他の通知を全て完全にミュートに設定することで、スマホの誘惑を最小限に抑えることができそうだ。

 

見えない場所にスマホを置く

「人々は敬意を表すために、テーブルにあえてスマホを伏せて置きます」とジャーナリストで”How To Break Up with Your Phone”(スマホと別れる方法)の著者のキャサリン・プライス氏は語る。「私に言わせれば、そんな風にスマホを常に置いておくのは、話している相手を挑発してるようなものです。会話をしている相手がそこにいるのに、わざわざその間にスマホを挟んでいる訳ですから」

調査によれば、たとえ画面を伏せていたとしても、常にスマホを目の前においておくことで、精神的に根気のいる作業のパフォーマンスを低下させ、会話の理解度や、相手との繋がりを阻害するという。

「もし他者との関係に重きを置いたり、片付けたいタスクがあるのなら、スマホはまず目に入らない場所に置き、音も聞こえないようにしなくてはいけません」とプライス氏は言う。 「誰かといる時や仕事がある時は、ミュートやマナーモードに設定してカバンの中にしまっておくんです。『どうしても』って時はお手洗いやタバコを一服する感覚で、相手に許可を得てから席を離れて使うのです」

 

目覚まし時計を買う

寝室にスマホを持ち込むのは依存に拍車を掛けてしまう。特に夜、寝る前の使用は要注意なので、スマホをアラームとして使うのは止めるのが賢明だろう。

「就寝前1〜2時間はスマホの使用は避けてください。研究によると、就寝前のスマホの使用が就寝時間を遅くしているという結果が出ています。体内時計を狂わせて、翌朝の睡魔を促進し、睡眠を促すホルモンのメラトニンを抑制してしまうんです」とNPO「Children and Screens(子供と画面)」の創立者、パメラ・ハースト-デラ・ピエトラ氏は語る。

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「朝目覚めたら、メールやメッセージ、SNSをみる前に、スマホを見ない一定の時間を定めてください。例えば、オフィスに着くまで、子どもが学校に行くまで、返信や電話は待ってみて下さい」と彼女は続けた。

 

無理をせず、小さな目標を設定する

クラポー氏は、スマホの使用時間を減らすのに最も効果的な方法は、少しずつ、徐々に時間を削っていくことだと言う。幸運なことに、iPhoneにはアプリの使用時間にリミットを定め、使用アクティビティを追跡してくれる「App使用時間の制限」機能もあり、これはとても役立ちそうだ。

「目標は達成できるものの方が良いです」と彼は語る。1日にSNSに使う時間が3時間なら2時間半に、1日でメッセージする時間が4時間なら3時間半にと、無理のない目標設定が大切だそうだ。「通話、メッセージ、SNSなどがある中から優先順位をつけて、それぞれに達成できそうな使用時間の制限を設けるんです」

一方、自らによって自分のスマホが”没収”されていると感じないようにすることも大切なようだ。「無理に厳しくし、それがストレスになるほど、継続するのが難しくなってしまいます」とクラポー氏は言う。彼によれば、苦に成り過ぎないくらいのさじ加減で徐々に使用時間を減らすことにより、「ちょうど良い削減レベル」を見つけることができるそうだ。「目標はスマホの使い方を進化させることであって、使用を完全にやめることではありません」

心強い仲間を見つける

スマホの使用を抑えるために、必ずしも1人で奮闘する必要はない

「他の人を巻き込んでしまえばいいんです」とリー氏は言う。「親しい友達に頼んで、自分がしっかりと目標を達成できているか毎週確認してもらうんです。また、友達やパートナーと一緒にいる時は、スマホを触らないよう約束するのも良いでしょう」

マルチタスクを辞める 

スマホを見ながら、同時に友達と会話したり、Podcastを聞くことが出来ると考えている人もいるが、グリーンフィールド氏によれば、実際はそうではないようだ。

「マルチタスクなんてものは存在しません」と彼は言う。「一度に集中して得られる情報は1つです。多くを一斉に得ようとすればするほど、やるべきタスクを成し遂げるまでにより長い時間がかかってしまいます」

この現実を受け入れられれば、自然とスマホを置いて、目の前の人やタスクに集中できるようになりそうだ。

 

 スマホを一切使わない時間を設ける

スマホの使用時間を減らすに当たって、週や1日単位でスマホを一切使わない時間を設けるのも得策かもしれない。例えば週に1度、敢えてスマホを家に置いて散歩に出てみるのも良いだろう。

「30分『スマホに邪魔されない』状況をつくり、1分間『スマホ休憩』(スマホを使って良い時間)を設ける」ことをローゼン氏は勧める。「友人にはこれを実践することを一言断っておけば、すぐに返信が来なくても相手が気を悪くすることはありません。または、60分〜90分電子機器を使ったら、10分〜15分の休憩を取って、脳のリフレッシュになる事、例えば外の空気を吸ったり、メッセージや電話ではなく直接誰かとお喋りしたりしてみて下さい」

デスクや食事をするテーブルなど、電子機器を持ち込まないスペースを決めるのも手だ。一方、スマホを使うためだけの時間を設けるのも効果がありそうだ。

「1日のどこかに、メッセージやSNSを見る特定の時間を設けてあげて、スマホ内の要点を押さえておくことがコツです」と語るのは、企業の生産性を上げるためのプラットフォームHiveのCEOで共同創設者のジョン・ファーノックス氏。「毎時間メッセージやSNSを確認していたら、多くの代償を払っているでしょう。確認時間を設定して、仕事に関係のない通知にできるだけ時間を持って行かれないようにしましょう」

 

他のアクティビティや趣味に集中する

 「特に意識的にやることがない時に人はスマホをいじります」とリー氏は語る。「趣味や何かしらのアクティビティをすることで、より有意義でバランスの良いリズムが生まれます」

スマホ画面を眺める代わりに、外で時間を過ごしてみたり、新しい本を読んでみたり、ボランティア活動に参加したり、友達や家族と時間を過ごすのも良い。スポーツや楽器など、何か新しい趣味を開拓してみるのも良さそうだ。

「大切なのは、自分がどんな目的でスマホを使っているかを洗い出すことです。リラックスや社交など、その用途は様々です。そこで同じ用途を満たしてくれるアクティビティを探して、スマホを操作している時間をそれらに置き換えるのです」友人からそのアイデアを得たと言うとリー氏は話した。

「多くの人が5分、10分というちょっとした手持ち無沙汰にスマホを開きますよね。友達やバス、授業が始まるのを待っている前などです。何もしなでいることに落ち着かない人が多いのです」と彼は続けた。「こうした空き時間に他の使い道を見出すことも、選択肢ではないでしょうか。読書をしたり、周囲の人とお喋りをしてみて下さい」

 

「スマホは気を引くために作られている」と理解する 

マインドセットを変えれば、こうした小さな変化を達成しやすくしてくれるだろう。

 「第一に知って欲しいのは、スマホやアプリは意図的に中毒性のある作りになっているということです」とキンドレッド氏は語る。「このテクノロジーは中立的なものではありません。消費者がスクリーンを見るのに少しでも多くの時間を費やし、作り手の利益となるよう研究している人たちがいるのです」

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この現実を理解することによって、変化が促され、スマホを手放せないのは個人の欠落や汚点などではないことも分かる。それは結果として「自分の時間を取り戻そう」というモチベーションにも成り得ることだ。 

「時間は有限です。スマホはその貴重な時間をできる限り長く奪うために作られています。アプリ制作側はそうすることで利益を出しているのですから」とプライス氏は語る。「それをどう防ぐかが勝負どころです。スマホに費やしている時間には本来、他の使い道があることを念頭に入れておいてくことが大切です。友達や家族、子どもと過ごしたり、仕事を片したりと、他に意味ある時間の過ごし方が沢山あります。それらをせずに、スマホに依存する代償は非常に大きいです」

多くの人が情報や経験を逃して取り残されることへの恐れ(FOMO: Fear Of Missing Out)を抱き、スマホを手放せずにいる。しかし、取り残されることへの「恐れ」ではなく、それによる「喜び」に目を向けることを奨励する。

「スマホを手放して得られる素晴らしい対価を考えてみてくだい。会話、感情的な繋がり、密接な関係と、全ての体験... 沢山あります」と彼女は語った。「ランチの時に机にスマホを置いて行ってみたり、散歩にスマホなしで行ってみたりして、あえて『取り残されることへの喜び』(JOMO: Joy Of Missing Out)を感じてみてください。自ら受け入れてしまった束縛から自由になりましょう」

ハフポストUS版を翻訳、編集しました。

「かわいい」よりも「強い武器」を手に入れよう。年間4000人のオーディションを運営して思うこと

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ミスiD2020の各賞授賞式の様子

7月から始まった「コンプレックスと私の距離」で行ったアンケートの881人の回答を見ていると、「こんなにも自分の容姿に自信がない人が多いのか」と驚きます。

 その一方で、ミスコンやアイドルの人気投票のように、主に「容姿」で人に順位をつけるようなものも存在しています。こういうものの存在が、容姿に自信がない人たちを苦しめているのでは? 

そんな疑問を持った時、「ミスiD」というオーディションを見つけました。

「ミスiD」のホームページにはこんな風に書かれています。

 2012年にスタートしたミスiD。「iD」は「アイドル」と「アイデンティティ」。そして「i(私)」と「Diversity(多様性)」。

ルックス重視のミスコンとは異なり、ルックスやジャンルに捉われず、新しい時代をサバイブしていく多様な女の子のロールモデルを発掘するオーディションであり、生きづらい女の子たちの新しい居場所になることを目標とするプロジェクトです。

 2019年で8回目を迎えた「ミスiD」の発起人の一人であり、ミスiD実行委員長を務めている講談社の編集者、小林司さんに、容姿とコンプレックス、そして人の魅力とは何なのか聞いてみました。

オーディションの様子

コンプレックスは、社会のルールのなかで生まれる

――まずは、ミスiDをよく知らない人のために、どんなものなのか簡潔に教えてください。

ミスiDはとてもわかりにくいので、簡潔にと言われるととても難しいのですけれど(笑)。

2012年にスタートし、初代グランプリがまだ沖縄にいた14歳の玉城ティナで、その後、ネットの寵児になった”ゆうこす”こと菅本裕子や、少年院上がりでバラエティでブレイクした戦慄かなのなどを輩出しています。

「ミス」という言葉を冠しているので普通の「ミスコン」を思い浮かべる人もいるでしょうが、実際この顔ぶれを見てもわかるように、かなり違います。人を「容姿」で見るということではなく、「多様性」「多面体」として見ようと。一人一人が抱えている「才能」だけでなく、「生きづらさ」や「ネガティブな部分」もまるごと個性として見るオーディションだ、と考えてもらえたらと思います。

 

――確かに、わかりにくいですね。

そうですね。そもそもミスiDは、応募にあたってのNGを極力減らしています。引きこもりでも、金髪でも、タトゥーがあってもOK。国籍も問わず、30代でも大丈夫など。ただ「ミス」と謳ってる以上「既婚はダメ」などの最低限のルールもかつては存在していたんです。

そんな時、2013年のミスiDで、中村インディアという踊り子が既婚であることを隠して応募してきて、途中でバレてしまったんです。けれど、彼女のような人を既婚という基準に当てはめて落とすのはナンセンスだなと、失格にはせず賞をあげました。

以後、結婚していてもママでもOKになり、魅力的なトランスジェンダーの子が応募してきたことによってジェンダーもほぼフリーに。現在では「ルールよりも人を重視する」とルールに落ち着いてきています(笑)。

 詳しくは後でお話ししようと思いますが、コンプレックスは、「ルール」や「基準」によって生まれる「自分はNGなんだという感覚」から来るものだと思っています。

2019年の応募者の中に、顔を隠しているイラストレーターの子がいました。自分の顔が嫌い、絵で勝負したい、と。かわいい子なのですが、本人が絶望的なコンプレックスと感じてしまっているのであれば仕方がありません。でも、上手に顔を隠してくれるならオーディションとして成り立つのかなと。まずは、スタートラインには立ってほしかったので。

 

――とはいえ、ミスiDのグランプリほか、様々な賞をとっている女性たちは「かわいい」子が多いという評価もあると思います。

確かにそうかもしれません。でも「ミスiDはブスばっか」という声も同じくらいあるんですよ。これは「かわいいさの基準」はそれくらい多様で、いい加減なものなんだということの証明なのではないか、と思います。

また「中身重視だからかわいい子は選ばない」でもないんです。選考委員の吉田豪さんもよく言っているのですが、「ミスiDでは、ルックスも他の武器と同じく一つの武器にすぎない」んです。だから単純にルッキズムを否定する、みたいなことでもない。言ってしまえば、持って生まれたものの全部を肯定しよう、というだけで。かわいさって武器は案外弱いんですよ。

選考をする小林司さん

「かわいい」を横に置くと、魅力が重層化する

――先ほど、コンプレックスはルールとの兼ね合いで作られるとおっしゃっていましたが…。

ルールというのは、社会や世間が決めるものですよね。自分の外側にあるルールや基準に「満たない」とか「外れている」ところからコンプレックスは生まれると思います。それはルックスに限らず、例えば偏差値、学歴、家柄、裕福かどうかなども同様です。つまり全て他者との比較。

ミスiDの応募者の多くは、そういう社会のルールや他人との比較に自信をなくし、悪意ある他社の声に絶望し、ひいては世界との出入り口を自分で閉ざしてしまっています。

 でも、それはもはや「メンヘラ」とか言われるごく一部の変わった人たちの話ではなくなっていると思うんです。いまの日本の若い人たちは、SNSの普及でいつも誰かや情報と繋がっていて、ほぼノイズしかないんですよね。だから「ダメな自分」ばかりが肥大化していく。閉塞感や絶望感のない人なんて、いまほとんどいないと思います。

だからミスiDは、特別でマイノリティな女の子のオーディションではなく、今、日本で暮らす若い人なら誰でも行き当たる生きづらさと正面からぶつかっている新しいマジョリティのオーディションだと思っているんです。

あと、これまでミスiDをやってきて思うのは「かわいい」という問題を一旦横に置いてみると、その人の魅力が多面化、重層化していくということ。

 

――魅力の重層化?

今は「かわいい子はそれだけでハッピーな人生を送れる」という時代ではありません。世間で「かわいい」と言われるような子でも、もっとかわいくなりたいと願うし、比較からくるコンプレックスとはずっと戦わなければなりません。同時に、容姿とは別の複雑な悩みも抱えている。

だから、容姿はとりあえず横に置いて、自分の持っている魅力、武器を積極的に捉えてほしいなと思います。

芸能界で言えば、渡辺直美さんなんかはそれをいち早くやった人ですよね。「お笑い芸人」というレッドオーシャンではなく、競う人のいないブルーオーシャンに行った。世間一般のスタイルの基準は横に置き、「アメリカに行く」「エンタテインメントで勝負する」「自分の見せ方を徹底する」と明確に自分の人生をコントロールしています。武器とゲームプランがこれ以上ないくらいわかりやすい。

 

――そう言われても、容姿がコンプレックスと感じている人が「かわいい」を横に置くことは、ものすごく難しいと思います。

たしかに、すごく難しいことです。でもかわいいだけはどうしても相対評価が付いてきてしまいます。

でも「容姿」のコンプレックスが生まれる「基準」って、ほんとにいい加減だと思うんですよ。あたかも「かわいい」について一つの基準があるかのようにいつの間にか思ってしまっているけれど、ここに同席している僕やあなた、カメラマンさんの基準すら違うのだから、本当は一つの基準なんて存在しない。そうやって、自分の常識を強くシフトすることがまず第一歩なのかなと。

容姿だけじゃなく「成功している、していない」「年収が多い、少ない」というような社会の中でルールがあるように思われていることもありますよね。

 

――ミスiDは、そういう常識みたいなものを疑うオーディションということですか?

ミスiDは「考える場所」だと思っています。とりあえず「世間一般の基準」は一旦横に置いて、自分の頭で自分のいいところや何が本当は足りないのかを考えていく。武器はなんであり、自分の生きていく場所はどこかを。

ミスiD を8年見ていていちばん思うのは、自分では短所だと思っているところが長所だということが多い、ということです。けれど、ずっと否定されてきているから、本人はそれがわからない。

だから、ミスiDではそこを大いに褒めます。めちゃくちゃ褒める。だって、短所や、どうしてもダメな部分の中にこそ武器は隠れているので。

 かわいいか、かわいくないかという基準のないコンプレックスゲームに参戦してしまうと、本当にずっと地獄です。だから、その基準を自分に引き寄せてほしい。自分のかわいさは自分で決めると。

でもそれができないなら、その戦いでボロボロになる前に、この社会における自分の居場所を探す戦いにゲームチェンジしてほしいんです。

 そのロールモデルを増やすために、毎年4000人近い応募者の書類を読み、ファイナルに残る100人以上とはさらに時間をかけて向かい合っています。もう8年目なので、ファイナリストだけでも通算500〜600人。できる限り一人一人向き合ってきたつもりなんですが、物理的だったりいろんな理由で、実際にはそれができてないというのが最大のもどかしさですけど。

ミスiD 2020 グランプリに輝いた嵐莉菜さん

かわいくあることを謳歌するのも素敵なこと 

――先ほど、顔を隠している応募者がいるとおっしゃっていましたが、他にはどんな応募者が?

今年のグランプリの嵐莉菜は、ドイツ、イランなど5カ国のマルチルーツを持つ15歳です。かわいさのグルーバル化の象徴になるんじゃないかと思います。

そして、去年の「ミス東大」グランプリになった、えに。彼女はミス東大という肩書きの苦しさから逃げるようにミスiDに応募してきたのですが、「ミス東大」と他人からは才色兼備の頂点にしか見えないわかりやすい物語すら機能しなくなっていることの象徴だと思うんです。

また、アシュリーというコンゴとのハーフの女の子が書いた「保育園の頃、お絵かきの時間で疑いもなく肌色で自分の似顔絵を描いてた」で始まるnoteも話題になりNHKやネットメディアが取材に来たりしました。傷つかないように遠ざけてきた自分のハーフというコンプレックスと、ミスiDを通じて向かい合うようになった女性です。 

アシュリーさん

他にも、「ミスiDは社会から傷つけられたマイノリティが、マイノリティな部分をあらわにして、賞という形で肯定され、変な人のまま回復していく。そんなことがよく起きていると思います」という文章を応募書類に書いてきた高校生がいました。

僕なんかよりもずっと上手にミスiDというものを言語化してくれていて、すごいなと思いました。コンプレックスを完全に克服するなんて無理だと思うんですよ。だから、変な人、変わり者でいいんじゃないかと。変な人のまま回復していくってとても未来的だし、優しくていい言葉だなと思います。ほんとはみんな変な人なのですから。

窮屈になっていく一方の社会で、正しさだけを求められ、追い込まれていく若い世代に、大人が何の手も差し伸べないというわけにはいかないのではないでしょうから。

ミスiD実行委員長・小林 司さん

――そういった考えを持った小林さんの目には、ミスコンやアイドルの人気投票はどう映るのでしょうか?

 僕は基本的にいろんな価値観があるのが楽しい、もしくはそれで初めて息ができるいい加減な人間なので、別に嫌いじゃないですよ。歌舞伎とかプロレス、宝塚、ジャニーズみたいに「クラシックな価値観」だからこそ与えられる感動も大好きなので。

 だって、もしも「ルッキズムは死んでもダメ」となると、それはそれで、新たなルールになってしまい、別の閉塞感を生んでいくと思うんです。かわいくあることを純粋に謳歌するのだってとても素敵なことのはず。

髪型やファッション、メイク一つとっても形や色など女性は生き物としてのバリエーションが純粋に豊富で、例えば変わりたいと思った時にもそれらを駆使して大きく変化できる。そういった女の人のルックスに表れる多様さや幅みたいなものは、やはりすごく魅力的だと思います。

 「こうなりたい」「かわいくなりたい」という理想を追い求めるからこそ生まれるポジティブな気持ちであれば、コンプレックスにはならないはずです。でも、他人と比べて、引き算をしちゃうと一瞬でネガティブなコンプレックスになります。それは誰にでも言えることですが。

 だからこそミスiDは、コンプレックスを生み出す画一的で窮屈な美の基準ではなく、多様な美のあり方、人生のあり方の共有を目指すオーディションでありたい。そして「どんな肌も、どんな髪も、どんなスタイルも、どんな年齢も、どんなファッションも、どんな人生にも、どんなダメさにもそれぞれに美しさがある」と伝え続けていきたいんです。

 

ミスiD2020の結果はこちらから。

 

コンプレックスとの向き合い方は人それぞれ。
乗り越えようとする人。

 

コンプレックスを突きつけられるような場所、人から逃げる人。
自分の一部として「愛そう」と努力する人。
お金を使って「解決」する人…。

 

それぞれの人がコンプレックスとちょうどいい距離感を築けたなら…。そんな願いを込めて、「コンプレックスと私の距離」という企画をはじめます。

インフルエンザ予防はできていますか?すぐに取り入れたい対策アイテム5選

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この時期はいくら対策しても、不安になりますよね…。

今年も流行シーズンに突入したインフルエンザ。「年末年始の多忙な時期、絶対にかかりたくない!!」と、気を張っている人も多いのではないでしょうか。

予防には第一に、健康的な生活や早めのワクチン接種が肝心。しかし忙しい日々が続き、病院に行く時間がない人も多いはず。

そんな人は日頃から対策をして、インフルエンザにかからないようにするよりほかありません。

今回は、すぐに取り入れることができる予防アイテムを5つ紹介します。

帰宅時などにワンプッシュ消毒

アルボナース 手指消毒剤 保湿剤配合・速乾性 1L [指定医薬部外品]

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ワンプッシュで消毒ができるアルコール手指消毒・除菌液です。同じタイプの商品が、病院などにも置いてるのを見かけたことがある人も多いのではないでしょうか。

ノズルをワンプッシュするだけで使うことができるこちらの商品。アルコールなので水と違い、すぐに乾くのが特徴です。ティッシュなどを濡らし、雑菌が付いているスマホなどの電子機器の除菌にも活用できます。

1リットルのお徳用サイズなので、年間を通して利用できそうですね。使用後は、折りたたんで捨てられる減容ボトルなのも、うれしいポイントです。

ノーズクッション付きのマスク メガネの曇り予防にも

快適ガードプロ プリーツタイプ レギュラーサイズ 30枚入

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インフルエンザシーズンの必需品であるマスク。感染予防の定番アイテムですが、隙間ができてしまうと効果が下がってしまいます。

こちらの快適ガードプロ プリーツタイプは、ノーズクッションで鼻とマスクの間の隙間をなくしてくれる、密着性の高さが特徴の商品です。縦横クロスプリーツ構造を採用しているので、アゴ周辺の隙間もなくしてくれます。

息がマスクから漏れないので、メガネが曇りにくいのもポイント。

特殊静電フィルターにより、ウイルスのほか花粉や微粒子なども防ぐので、インフルエンザシーズンの次にやってくる花粉症シーズンにも大活躍しそうですね。

二酸化塩素でウイルス対策 首に掛けて持ち歩ける除菌マスク

クロニタス ウイルス・細菌・ニオを除去する 首かけマスク お得な2個セット

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こちらは、首に掛けて持ち歩ける最新型の除菌マスクです。空間除菌グッズなどで使われている二酸化塩素の発生剤が入っています。

ウイルス・細菌や、においへの対策に利用できます。匂いはミント、無香料の2種類です。

使用の際は肌や肌着に直接触れないようにすること、屋外では風の影響を受けやすいので注意が必要です。

酒造メーカーが作るアルコール77%除菌スプレー

パストリーゼ77 スプレーヘッド付 500ml

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アルコール77%のスプレーです。神戸や神奈川などに工場を持つドーバー酒造が作る商品で、酒造会社ならではの純水度が特徴となっています。

緑茶から抽出した高純度カテキンが配合されており、まな板や調理器具の除菌・防臭にも利用可能。

アルコール度数がとても高いので、火の近くでの使用はNG。また、大量に使う場合は換気が必要です。

マスクにスプレーでフィルター性能がアップ

アレルシャット マスクでブロック 20mL

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マスクにシュッとスプレーすることで、フィルター性能をアップさせることができるというアイテムです。 

マスク独特の匂いが気になるという人もいると思いますが、こちらの商品は、植物抽出エキスによる消臭もできて、無香料・無着色が特徴です。

まとめ

インフルエンザの流行シーズンは、仕事の繁忙期や受験の時期にも重なるため、早めの対策が重要です。

自分や家族、職場の仲間のためにも、今回紹介したアイテムでインフルエンザに備えてみてはいかがでしょうか?

※記事で紹介した商品を購入すると、売上の一部がハフポスト日本版に還元されることがあります。
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