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乳房切除、生きるため 遺伝子検査で決断

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乳房切除、生きるため 決断の支えは遺伝子検査

自分の遺伝子を調べ、将来がんになりそうだと分かったら、健康なうちに乳房を切除する――。

米女優のアンジェリーナ・ジョリーの決断で注目を集めた予防切除。米国では、そんな決断をする女性が少なくない。

ニューヨークで鮮魚店を営むドリアン・メイシア(47)もその一人だ。

メイシアが遺伝性乳がんを疑ったのは15年前。長男を妊娠したことがきっかけだった。3人のおば、2人のいとこが乳がんや卵巣がんで亡くなったことを医師に伝えると「あなたも将来、がんになるかもしれない」。がんに囲まれた家系であることに気づいた。

長男に続き、長女も誕生し、子育てに忙殺されていた。気になり始めたのは5年ほど前。同年代の友人を乳がんで失ったのがきっかけだった。

私ががんになる確率はどれぐらいなのか。そんな問いが頭の中を巡り始めた。

遺伝子検査をしたいと思ったが、周囲から「数千ドルかかる」と聞き、迷った。まずはできることをしようと、半年ごとに検診を受けるように。すると逆に『死』がいつも頭から離れなくなった。自分の葬式のとき、2人の子どもはきっと泣くだろう。そんなことを考え、眠れぬ夜を過ごした。

このままではいけない――。約3千ドル(約31万円)の検査費用の大半が自分の入っている医療保険でカバーされることを確かめ、遺伝子検査に踏み切った。

メイシアの検査結果は「陽性」。BRCAという遺伝子に変異があり、70歳までに最高87%の確率で乳がん、44%の確率で卵巣がんになるリスクがあることが分かった。メイシアは6歳のとき、父親を膵臓(すいぞう)がんで亡くしていた。「両親参観の度に『なぜ母親しか来ないの』と聞かれやしないか、ビクビクしていたあの時の気持ちを、子どもたちには絶対味わわせたくないと思った。すぐに乳房と卵巣の切除を決めた」

2011年に卵巣を切除。12年4月には乳房を予防切除し、乳房を再建した。米国では1996年にBRCAの遺伝子検査が始まり、計130万人以上が受けた。結果が「陽性」でも、乳房を予防切除するのは最近でも1~2割と少数派だ。本当に乳がんによる死亡率が下がるのか、科学的な根拠はまだ不十分ともいわれる。メイシアは卵巣を切除したことでホルモン剤を飲み続ける毎日だ。それでも彼女は言う。「今は1千%幸せ。この選択を後悔したことは一度もない」

日本でもBRCA遺伝子検査を受ける動きがじわりと広がっている。公的医療保険がきかず、費用は20万円台。これまでに約2千人が受けた。昨年5月の「ジョリーの告白」以降に受けた人が半数を占める。

日本では結果が「陽性」でも、メイシアのように乳がん発症前に、両胸を切除した報告例はない。

ただ、片方の乳房が乳がんになり、BRCA遺伝子にも変異がある人が、もう片方の乳房を予防切除する例は出始めている。11年から予防切除を始めた聖路加国際病院(東京)では、そうした例が10人を超える。ブレストセンター長の山内英子は「両胸の予防切除を考えている人もおり、いずれ手術を受ける人が出てくると思う」と話す。

遺伝子検査だけで、健康な自分の体にメスを入れる――。そんな時代が日本にも訪れようとしている。(敬称略)(ニューヨーク=岡崎明子)

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(朝日新聞社提供) 

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