御嶽山、不明なお十数人か 写真記録や同行者ら証言
御嶽山(おんたけさん、長野・岐阜県境、3067メートル)の噴火で、死亡が確認された47人のほかに、少なくとも十数人が噴火に巻き込まれた可能性が極めて高いことが警察関係者への取材でわかった。いずれも救出に至っておらず、警察と自衛隊、消防は3日以降も火山活動や天候の様子を見ながら捜索を続ける。
2日早朝に再開した捜索・救出活動は雨で二次災害の危険があるとして、正午前に中止した。一方、長野県警は2日、死亡が確認された21人の氏名を新たに発表。死者47人全員の身元が判明した。
警察関係者によると、噴火の前後にスマートフォンなどで撮影した写真を家族や知人に送っていた▽下山した同行者らの証言から山にいたことがはっきりしている――といった人のうち、安否がわかっていない人について、警察や自治体は被災した可能性が極めて高いと判断。少なくとも十数人が該当することがわかったという。
ふもとの同県木曽町は、入山したとみられる19人の登山者についてこの日夜、家族らから「連絡が取れない」などの相談が寄せられていることを発表。ただし、「不明者数全体ではない」(原隆副町長)との立場だ。
同県災害対策本部によると、2日の捜索は後方支援も含めて1千人態勢。ヘリコプターによる捜索は上空に厚い雲がかかっており、最初から見送った。約230人が陸路で入山したが、山頂で降雨が確認され、午前11時35分に下山を決めた。
王滝頂上山荘と御嶽剣ケ峰山荘の周辺や二ノ池~一ノ池などの登山道から離れた場所も含めて捜索する予定だったが、降灰がぬかるんで滑りやすくなったり、山荘の屋根が倒壊したりする恐れがあったという。火口の南側をはじめ、まだ捜索が十分でない地域もあるという。
気象庁の説明では、御嶽山の火山性微動は1日午後7時以降、検知できないほどのレベルに落ち着いてきている。わずかな降灰が確認され、噴火は続いているとみられる。周辺では3日午後6時までの24時間に60ミリの雨が予想されている。
■入山者、正確な把握困難
行方不明者数の正確な把握は噴火から5日たってなお、難しい状況が続いている。
山には各地から登山者が集まってくる。それゆえに火山災害がひとたび起きると、住宅地をおそう土砂災害などと比べて被害をつかむのが難しい。長野県警などは下山者の証言を集めたり、登山口近くに残された乗用車のナンバーを調べたりして、山中に取り残されている可能性のある人の割り出しを進めている。
3千メートル峰のなかでも比較的登りやすい御嶽山。夏~秋の1日の登山者は、長野側からだけでも1700~2600人程度に上る。遭難時の捜索や身元確認の手がかりになるのが、登山者の名前や連絡先、登山ルート、日程を書き込んだ登山届。だが、警察庁によると、噴火当日に届けを出していたのは長野側が303人、岐阜側が24人にとどまった。
全国的にみても、傾向は同様だ。昨年の全国の山岳遭難2172件のうち、登山届が出ていたのは371件で2割に満たない(警察庁まとめ)。毎年30万人近くが登る富士山で昨年登山届を出したのは静岡、山梨両県警の把握分で1千件足らずだ。日本山岳協会などは登山届を出すよう促し、入山者数の把握に努めているという。
長野県警によると、今回の災害で登山届を出した人のなかで今も連絡が取れないのは5人という。(後藤遼太)