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エボラ出血熱が奪う西アフリカ3カ国の「生命力」 内戦からの復興に打撃

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貧困、内戦、そして今度は死に至る伝染病───。国連の人間開発指数などで下位に位置し、世界最貧国グループに属するシエラレオネ、リベリア、ギニアは、今回のエボラ出血熱が流行する前は、悲惨な内戦の影から抜け出し、アフリカの経済成長に乗る兆しを見せていた。


死者数900人以上と過去最悪の感染規模となったエボラ熱は、資源に依存する西アフリカ3カ国の経済に打撃を与えている。


当局者らによれば、エボラ流行は地域の旅行業を直撃するのみならず、人や物の往来が減り、農業と鉱業も停滞を余儀なくされ、海外からの投資拡大に支えられていた国内総生産(GDP)の伸びにもボディブローのように効き始めているという。


世界銀行でアフリカ地域総局の副総裁を務めるマクタール・ディオップ氏は「これら3カ国に共通する特徴は、いずれもぜい弱な国家ということだ」と指摘。「つまり、通常時でも国際社会からのサポートを必要としており、今回の危機で一段と追い込まれている」と語った。


リベリアのアマラ・コネー財務相はロイターに対し、エボラ熱はすでに、4─6月の同国経済に1200万ドル(約12億円)の打撃を与えたと説明。国家予算の2%に相当する経済損失であり、従来5.9%としていたGDP伸び率予想を下方修正せざるを得ないと述べた。


同相は「われわれは今回の危機対応に奔走している。もし封じ込めができなければ、国家経済に深刻な影響をもたらす」と危機感を募らせる。


1989─2003年の内戦の傷跡がまだ残るリベリアの首都モンロビアでは、エボラ感染者の遺族らが政府当局の指示を無視し、遺体を路上に放置する問題も持ち上がっている。


一方、シエラレオネのサムラ・カマラ外相は、エボラ対策に回せる予算はほとんどないと厳しい財政状況を吐露。ワシントンを訪問中の同相はロイターの取材に「資源やエネルギーを(エボラ対策に)回さなくてはならない。降ってわいた病気と闘うために、経済発展の他の側面が犠牲になっている」と語った。


世界銀行と国際通貨基金(IMF)は、今回のエボラ熱の発生源となったギニアについて、GDP成長率予想を4.5%から3.5%に引き下げた。世界銀行とアフリカ開発銀行は、リベリア、ギニア、シエラレオネに合計2億6000万ドルの支援を行うと発表している。


エボラ熱による死者はナイジェリアでも報告されており、アフリカ最大の人口を抱える一大石油産出国である同国経済に対する影響も懸念が膨らんでいる。


<物価上昇の懸念も>


世界銀行は、ギニア、シエラレオネ、リベリアの3カ国では、感染地域の住民が農地を離れているため、農業が打撃を受けていると指摘する。


リベリアのコネー財務相は、農業と輸送業の停滞や市場の活動低下により、主要食品の価格が上昇する可能性もあると指摘。「インフレを注視している。今のところ大丈夫だが、住民が孤立し、主要市場が閉鎖されたロファ(ギニアとシエラレオネと国境を接する)の状況を懸念している」とし、「食品価格の上昇を招きかねない都市部住民の買いだめ」に警戒感を示した。


首都モンロビアの住民は、エボラ感染への恐怖が日常生活にも混乱をもたらしていると話す。エボラウイルスは感染者の体液などを通じて広がるが、客から感染するのを恐れたタクシー運転手は後部座席の乗車人数を4人から2人に減らし、運賃も値上げしているという。


コネー財務相は、便乗値上げには政府が介入するとしている。


英ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)やエミレーツなど大手航空会社の一部は、エボラ感染が確認されている国への運航を停止した。また各国政府当局者によると、海外からの駐在員たちも感染を恐れて国外退避しており、消費や歳入が落ち込む要因にもなっている。


ギニア財務省の高官は「空港やホテルの活動低下で収益が減少している」とロイターに語った。


内戦が10年以上続いたシエラレオネとリベリアはかつて、「絶望的なアフリカ大陸」の象徴的存在だった。ギニアは難民や武装勢力の流入に苦しめられた。


しかし、内戦が終結して約10年が過ぎ、同3カ国は鉱山や石油開発、インフラ建設への外資流入を背景に急成長を経験した。


今、その経済回復がエボラ感染に脅かされている。リベリアのコネー財務相は「今回の経済的な難題は、長年にわたる内戦が終わり、3カ国が平和と安定を享受している時に訪れた」と語った。


<「一緒に戦おう」>


同3カ国で事業を展開する大手外資企業の多くは、今回のエボラ熱流行に際し、従業員の移動を制限したうえで予防措置を講じるなど、慎重に対応している。


世界銀行は、高度なスキルを持った駐在員の国外退避が続けば、エボラ感染地域の鉱業では「生産量の相当の低下」があると予想する。コネー財務相によると、鉄鋼大手アルセロールミタルなどはリベリアでの鉄鉱石鉱山の操業を続けている。


エボラ隔離病棟が7月に作られたギニアのシギリで操業する南アの産金大手アングロゴールド・アシャンティは、現地で予防対策は取っているが、事業そのものに影響は出ていないとしている。


しかし、より広い地域に視野を広げると、鉱山各社は警戒を強めている。ガーナとコートジボワールで鉱山を所有するペルセウス・マイニングは先月、ギニア、シエラレオネ、リベリアからの渡航者受け入れを禁止した。


リベリア沖で米石油大手エクソンモービルと共同で石油開発を行うカナディアン・オーバーシーズ・ペトロリアムは、採掘開始を延期するとしている。


エクソンモービルは「モンロビア事務所は営業を続けている」としたうえで、社員の安全が最優先だと語った。


リベリアとシエラレオネの当局者は、エボラ熱を理由に投資を引き揚げないよう訴えている。


リベリアのコネー財務相は最後にこう語った。「国を離れないでほしい。われわれと一緒に戦おう。それが私からのメッセージだ」。[モンロビア/ダカール 6日 ロイター]


(原文:Clair MacDougall and Emma Farge、翻訳:宮井伸明、編集:伊藤典子)


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