協定は2日の衆院外務委員会を経た後、4日の衆議院本会議で採決される予定だが、民主党からは菅直人元首相ら「脱原発」派による反対や棄権が相次ぐ可能性もある。時事ドットコムなどが報じている。
同日の(NCの)会合では、「野田政権当時に原発輸出を推進した」との賛成意見と、「2030年代に原発ゼロを目指す党方針と矛盾する」との反対意見が出され紛糾。対応を一任された海江田万里代表は原発輸出について引き続き議論することを約束し、賛成で了承を取り付けた。
(時事ドットコム「原子力協定に賛成へ=採決で造反も-民主」より 2014/04/01 20:27)
党の決定には納得できない民主党議員も想定される。MSN産経ニュースは菅直人元首相らの造反の可能性について報道。菅元首相は3月31日、自身のブログにおいて次のように述べている。
民主党は「2030年代に原発ゼロを実現するため、あらゆる政策資源を投入する」と決めた。その理由は原発事故のリスクの大きさや使用済み燃料の処理問題、さらには再生可能な自然エネルギーで将来に必要なエネルギーは十分供給可能という見通しから決めた。
新規の原発を建設すれば少なくとも40年間は稼働することが前提となるので、2030年代を超えて稼働することになる。2030年代に日本の原発をゼロにするという方針を前提とすれば、日本の原発をこれから外国に売り込むための原子力協定は民主党の方針と明らかに矛盾する。
原子力協定について誤りなき判断が必要だ。
(菅直人オフィシャルブログ「原発輸出」より 2014/03/31)
また、菅元首相と同様に、Twitterなどに協定承認へ反対する意見を投稿している民主党議員もいる。
いまなお原発を輸出する原子力協定に賛成する民主党議員がいると聞いて「バッカじゃないの」と答えた。明日の朝の部門会議で議論になり、採決されるかもしれないという。原発が安全だと呪文のように唱える議員は、はてさて出身労組の毒万頭が効いているのだろう。私はそんな法案には反対票を投じる。
— 有田芳生 (@aritayoshifu) March 24, 2014
原子力協定に反対する方々から、民主党の正念場だとメールやら、お電話頂きました。本当にそう思います。皆さんの思いを受け止め努力します!
— 徳永エリ (@eri_line) March 29, 2014
■原子力協定とは何か
原子力協定とは、原発などの原子力関連資機材などを輸出する際、相手国が平和目的に限って利用することを法的に義務づけるために結ぶもの。日本は既にアメリカやイギリス、フランス、カザフスタン、韓国、ベトナムなどと締結している。
協定は締結された後、日本では国会の承認を経る必要がある。今回問題になっているのはトルコとUAEとの協定だが、民主党の他にも、脱原発を目指すという方針を掲げている共産党などで、海外向けには原発輸出を許すのかとの批判がある。
福島第一原発の事故以降、民主党は「2030年代に原発稼働ゼロ」とすることを目指した「革新的エネルギー・環境戦略」を決定。「原発に依存しない社会の1日も早い実現」を第1の柱に据え、あらゆる政策資源を投入するとしている。しかし、革新的エネルギー・環境戦略では、国内の原発の再稼働や新設のみに言及し、輸出については具体的には触れてはいなかった。
■原子力協定に賛成する民主党議員の言い分
民主党の中には、世界における安全保障の立場から、原子力協定の締結に取り組んできたとする議員も存在する。というのも、原子力協定では原子力の安全利用の協定でもあり、例えばアメリカがUAEと締結している原子力協定では、UAEは核燃料サイクルを実施しないことを法的義務として定めており、そのため、法律上は核燃焼サイクルによって取り出したプルトニウムで、核兵器製造はできないということが約束される。
311を経験し、エネルギー政策を転換し2030年代原発ゼロを目指してあらゆる政策資源を投入する、と政権時代に公約した民主党としても、「一国脱原発」の姿勢のみでは、世界の核不拡散体制の維持強化に向けた責務を果たせないとの考えから、トルコやUAEとの原子力協定締結に取り組んできた。
— 長島昭久 (@nagashima21) April 2, 2014
民主、原子力協定に賛成へ 造反者出る可能性も➡︎私も政調役員会で賛成の発言をした。核不拡散と平和利用のための協定であり、戦略的に重要なトルコやUAEとの連帯を強めるもの。また、与党のときに同様の協定を成立させたことも忘れてはならない。 http://t.co/4ST5AAvKQX
— 金子洋一・民主党参議院議員(神奈川選出) (@Y_Kaneko) April 1, 2014
1)昨日は、原子力協定について激しい議論を交わした。本来、原子力協定は、核不拡散・平和利用のためのものだ。大量破壊兵器である核を開発しようという野心を隠さない国さえある中で核を平和利用に限り削減していくためにも有効な仕組みだ。昨日は、日トルコ、日UAE原子力協定について議論した。
— 原口 一博 (@kharaguchi) April 1, 2014
3)日本が国内に一機の原発も持たず一切、核に関わらないとしても世界の核は簡単にはなくならない。原発を作るか作らないかは、その国の主権に関わることで日本に決める一義的な権利はない。この50年を見通してもいかに安全に安定的に原発を減らすか、稼働している原発の安全性を高めるかが鍵だ。
— 原口 一博 (@kharaguchi) April 1, 2014
3)日本が国内に一機の原発も持たず一切、核に関わらないとしても世界の核は簡単にはなくならない。原発を作るか作らないかは、その国の主権に関わることで日本に決める一義的な権利はない。この50年を見通してもいかに安全に安定的に原発を減らすか、稼働している原発の安全性を高めるかが鍵だ。
— 原口 一博 (@kharaguchi) April 1, 2014
4)世界では、東芝-WH社、三菱重工-アレバ社、日立製作所-GE社の3大グループを中心に新興国の企業が加わり原子燃料産業の再編が起きるだろう。「9条を守れと言うだけでは、平和が守れないのと同様に脱原発を主張しているだけでは、安全は守れない。」このジレンマにどう向き合うのか?
— 原口 一博 (@kharaguchi) April 1, 2014
このような理由から海江田代表も、原発輸出には慎重としながらも、核の不拡散のためには協定が必要として、「消極的賛成」の結論に至ったという。
海江田万里代表が「核平和利用や不拡散には賛成だが、原発の輸出は慎重であるべきだ」との「消極的賛成」の見解をまとめ、了承された。桜井充政調会長は会合後の記者会見で「分かりにくい結論」と認めた上で、採決時に造反が出る可能性について「想像していない」と述べた。
(MSN産経ニュース「原子力協定2本 民主、消極的賛成 菅氏ら造反の可能性も」より 2014/04/02 09:09)
なお、今回承認の決議が行われるUAEとトルコに対する原子力協定は、それぞれ内容が異なっており、特にトルコとの原子力協定については、日本が同意すればトルコが使用済み核燃料を再処理できるとした協定内容であることから「トルコにウラン濃縮や再処理を認めかねない内容になっている」との意見もある。