就職・進学・友達…大学生たちが夢見てたもの バス事故
長野県軽井沢町で15日に起きたスキーバス事故で、長野県警が亡くなった乗客の方々を発表した。全員が大学生だった。
■好奇心旺盛、難関くぐり米留学
早稲田大国際教養学部4年の田端勇登さん(22)は、4月からは希望していた金融機関への就職が決まっていた。
海外への関心が高く、高校1年のとき、米国に1年間留学した。留学には英語などの試験をパスする必要があった。留学先で知り合った1学年上の女性(22)は「この試験は、高校1年生にとってはレベルが高いもの。高1で留学できること自体、勇登はすごいな、ってみんな思っていた」と振り返る。
明るく気さくで、年上の人とも物おじせずに話す姿が印象的だった。女性は「好奇心旺盛で向上心が強い勇登だから、社会人になってこれから世界で活躍しよう、という時だったと思う。まだ信じられない」と話した。
今年の正月、親族の男性には「卒業旅行には南米に行く。楽しいことばかり」と語っていたという。
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田端勇登さん=フェイスブックから
■大学院進学へ勉強 父の誇り
東京農工大1年の小嶋亮太さん(19)は大学院に進むことが目標だった。所属は工学部応用分子化学科。さいたま市の実家を16日に弔問した知人男性(55)によると、父親に「ぼくは4年じゃないよ。6年いくから頼む」と伝えていたという。
男性は父親と仕事上の付き合いがあり、小学生のころから小嶋さんを知る。「素直なお子さん。ぐんぐん成績が伸びて、県立の進学校からストレートで国立大に入った。将来は研究者になりたかったんじゃないか。お父さんも『息子はおれとは違う』と喜んでいたのに……」
両親は戻ってきた棺(ひつぎ)に寄り添うように座り、弔問客に「こうなった以上は受け入れて、亮太の分も生きなきゃいけない」と気丈に話しているという。
小学校の同級生という女性(19)は「滑り台が苦手だった私に『おれがいればできるよ』と言っていっしょに滑ってくれた。優しくて、お兄さんみたいでした」と涙ぐんだ。
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小嶋亮太さん=不動岡高校ラグビー部のブログから
■教育者めざして文武両道
教育評論家、尾木直樹教授のゼミに在籍していた法政大3年の西原季輝(としき)さん(21)は、「教育者になる」という夢を膨らませていた。出身高校のホームページには、「教師になろうと決心するきっかけを与えて下さった高校の先生方に近づけるように大学でも文武両道を実践していきたい」と力強くつづっていた。
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西原季輝さん=フェイスブックから
■みんなの妹的存在
法政大4年、花岡磨由(まゆ)さん(22)は亡くなった14人のうち、最後に身元が確認された。友人の男子学生は「みんなの妹的存在でいつも笑って元気だった」と言葉を詰まらせた。同じマンションに住む60代男性は「小さい頃から知っているがすごくやさしい子。思ってもみないことで本当にショック」と声を落とした。
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花岡磨由さん=フェイスブックから
■友人と、恋人と、笑顔の写真
友人とおそろいの服での集合写真、交際相手との笑顔、海外の洋服店でのスーツ姿。法政大3年、林晃孝(あきたか)さん(22)のフェイスブック(FB)には笑顔の写真が残る。亡くなった西原季輝さん、花岡磨由さんと同じ尾木直樹教授のゼミ。カナダに留学し、周囲には「教師になりたい」と話していた。
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林晃孝さん=フェイスブックから
■茶道部に所属、熱心に稽古
希望の会社への就職が決まっていた早稲田大4年の阿部真理絵さん(22)。高校時代はバドミントン部と茶道部に所属。茶道部の同級生(22)は「きちんと稽古する真面目な人で、明るくて社交的だった」と振り返る。大学では国際教養学部に在籍し、フェイスブックに海外旅行の写真を載せていたという。
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阿部真理絵さん=フェイスブックから
■ランニング姿、爽やかだった
東京農工大1年の大谷陸人(おおやりくと)さん(19)はラグビー部に所属。他の部員3人と事故に遭った。近くに住む主婦(47)は近所をランニングする姿が印象深いという。「体格が良く背も高く、はっきりと話す爽やかな好青年だった」。両親は16日、警察を通して報道陣に「悲しみがいっぱいで対応できません」とコメントした。
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大谷陸人さん=フェイスブックから
■「将来は福祉の道へ」
「将来は福祉系の資格を取って働きたい」。首都大学東京2年の田原寛(かん)さん(19)は社会福祉を学ぶ授業を受け、こう語っていたという。事故であごの骨が折れて入院中の友人は「面白くて愛される人気ものだった」と振り返った後、「なんで俺が生きていて、向こうが死んじゃったのかよく分からない」とうつむいた。
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田原寛さん=友人提供
■高校時代、テニスに打ち込む
池田衣里(えり)さん(19)は東海大体育学部生涯スポーツ学科の1年生。大学の友人とツアーに参加した。川上哲太朗副学長(58)によると、東海大相模高(神奈川県)の出身で、高校時代はテニスをしていた。川上副学長は「これから色んな楽しいこともあったろうと思う。非常に残念だ」と話した。
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池田衣里さん=ツイッターから
■あんなに笑っていたのに
東京外語大1年の西堀響(ひびき)さん(19)はスペイン語を専攻。小学校で同じクラスで、同じ英語教室にも通っていた女性(18)は「勉強熱心。給食を食べる時もニコニコ笑っていた」と振り返る。事故を知って、涙がこぼれた。「あんなに笑っていた響がいないなんて信じられない。いまも同姓同名の別人だと思いたい」
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西堀響さん=フェイスブックから
■「技士として病院で働きたい」
広島国際大1年の山田萌(めぐみ)さん(19)は「臨床工学技士として病院で働きたい」と保健医療学部で学んでいた。講師は「どんなことも笑顔で臨み、さわやかな学生」と惜しむ。沖縄出身で、広島県東広島市のキャンパスにある学生寮で暮らしていた。同じ階の女子学生(19)は「亡くなったなんて信じられない」と語った。
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山田萌さん=広島国際大ライフセービング部のフェイスブックから
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【法政】西原季輝さん(21)=千葉県市川市▽花岡磨由さん(22)=東京都多摩市▽林晃孝さん(22)=川崎市【早稲田】阿部真理絵さん(22)=さいたま市▽小室結さん(21)=川崎市▽田端勇登さん(22)=東京都渋谷区【東京農工】大谷陸人さん(19)=東京都杉並区▽小嶋亮太さん(19)=東京都小金井市【首都大学東京】田原寛さん(19)=東京都八王子市【東海】池田衣里さん(19)=東京都多摩市【東京外国語】西堀響さん(19)=千葉市【広島国際】山田萌さん(19)=広島県東広島市
(朝日新聞デジタル 2016年1月16日20時58分)
亡くなった小室さん「世界に幸せな住まいを」 バス事故
15日未明のスキーツアーのバス事故は、命とともに夢も奪った。社会での活躍をめざして努力する姿を見てきた親や友人たちは、理不尽な死にあるべき生を重ね、悲しみに暮れた。
「世界中の人が幸せに暮らせるような住まいの環境づくりをしたい」。早稲田大国際教養学部4年の小室結(ゆい)さん(21)は母久美子さん(52)にそう語っていた。海外の都市開発にたずさわることをめざし、内定していた大手不動産会社で4月から新生活をスタートするはずだった。
父親が商社勤務で、小学4年まで香港や台湾で過ごした。中国語は話せたが「帰国子女なのに英語を話せないのはいや」と言い、中学と高校では英語を一生懸命に勉強したという。ロンドン大にも1年間、留学した。「何にでも前向きで、いつも全力でやる子でした。母親として誇りに思います」。久美子さんは涙ぐんだ。
![bus accident]()
小室結さん=フェイスブックから
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バス事故で亡くなった小室結さんの通夜には大勢の参列者が集まり、式場の外まで長い列が続いていた=16日午後7時21分、川崎市宮前区、越田省吾撮影
(朝日新聞デジタル 2016年1月16日23時20分)
長野県軽井沢町で15日に起きたスキーバス事故で、長野県警が亡くなった乗客の方々を発表した。全員が大学生だった。
■好奇心旺盛、難関くぐり米留学
早稲田大国際教養学部4年の田端勇登さん(22)は、4月からは希望していた金融機関への就職が決まっていた。
海外への関心が高く、高校1年のとき、米国に1年間留学した。留学には英語などの試験をパスする必要があった。留学先で知り合った1学年上の女性(22)は「この試験は、高校1年生にとってはレベルが高いもの。高1で留学できること自体、勇登はすごいな、ってみんな思っていた」と振り返る。
明るく気さくで、年上の人とも物おじせずに話す姿が印象的だった。女性は「好奇心旺盛で向上心が強い勇登だから、社会人になってこれから世界で活躍しよう、という時だったと思う。まだ信じられない」と話した。
今年の正月、親族の男性には「卒業旅行には南米に行く。楽しいことばかり」と語っていたという。

田端勇登さん=フェイスブックから
■大学院進学へ勉強 父の誇り
東京農工大1年の小嶋亮太さん(19)は大学院に進むことが目標だった。所属は工学部応用分子化学科。さいたま市の実家を16日に弔問した知人男性(55)によると、父親に「ぼくは4年じゃないよ。6年いくから頼む」と伝えていたという。
男性は父親と仕事上の付き合いがあり、小学生のころから小嶋さんを知る。「素直なお子さん。ぐんぐん成績が伸びて、県立の進学校からストレートで国立大に入った。将来は研究者になりたかったんじゃないか。お父さんも『息子はおれとは違う』と喜んでいたのに……」
両親は戻ってきた棺(ひつぎ)に寄り添うように座り、弔問客に「こうなった以上は受け入れて、亮太の分も生きなきゃいけない」と気丈に話しているという。
小学校の同級生という女性(19)は「滑り台が苦手だった私に『おれがいればできるよ』と言っていっしょに滑ってくれた。優しくて、お兄さんみたいでした」と涙ぐんだ。

小嶋亮太さん=不動岡高校ラグビー部のブログから
■教育者めざして文武両道
教育評論家、尾木直樹教授のゼミに在籍していた法政大3年の西原季輝(としき)さん(21)は、「教育者になる」という夢を膨らませていた。出身高校のホームページには、「教師になろうと決心するきっかけを与えて下さった高校の先生方に近づけるように大学でも文武両道を実践していきたい」と力強くつづっていた。

西原季輝さん=フェイスブックから
■みんなの妹的存在
法政大4年、花岡磨由(まゆ)さん(22)は亡くなった14人のうち、最後に身元が確認された。友人の男子学生は「みんなの妹的存在でいつも笑って元気だった」と言葉を詰まらせた。同じマンションに住む60代男性は「小さい頃から知っているがすごくやさしい子。思ってもみないことで本当にショック」と声を落とした。

花岡磨由さん=フェイスブックから
■友人と、恋人と、笑顔の写真
友人とおそろいの服での集合写真、交際相手との笑顔、海外の洋服店でのスーツ姿。法政大3年、林晃孝(あきたか)さん(22)のフェイスブック(FB)には笑顔の写真が残る。亡くなった西原季輝さん、花岡磨由さんと同じ尾木直樹教授のゼミ。カナダに留学し、周囲には「教師になりたい」と話していた。

林晃孝さん=フェイスブックから
■茶道部に所属、熱心に稽古
希望の会社への就職が決まっていた早稲田大4年の阿部真理絵さん(22)。高校時代はバドミントン部と茶道部に所属。茶道部の同級生(22)は「きちんと稽古する真面目な人で、明るくて社交的だった」と振り返る。大学では国際教養学部に在籍し、フェイスブックに海外旅行の写真を載せていたという。

阿部真理絵さん=フェイスブックから
■ランニング姿、爽やかだった
東京農工大1年の大谷陸人(おおやりくと)さん(19)はラグビー部に所属。他の部員3人と事故に遭った。近くに住む主婦(47)は近所をランニングする姿が印象深いという。「体格が良く背も高く、はっきりと話す爽やかな好青年だった」。両親は16日、警察を通して報道陣に「悲しみがいっぱいで対応できません」とコメントした。

大谷陸人さん=フェイスブックから
■「将来は福祉の道へ」
「将来は福祉系の資格を取って働きたい」。首都大学東京2年の田原寛(かん)さん(19)は社会福祉を学ぶ授業を受け、こう語っていたという。事故であごの骨が折れて入院中の友人は「面白くて愛される人気ものだった」と振り返った後、「なんで俺が生きていて、向こうが死んじゃったのかよく分からない」とうつむいた。

田原寛さん=友人提供
■高校時代、テニスに打ち込む
池田衣里(えり)さん(19)は東海大体育学部生涯スポーツ学科の1年生。大学の友人とツアーに参加した。川上哲太朗副学長(58)によると、東海大相模高(神奈川県)の出身で、高校時代はテニスをしていた。川上副学長は「これから色んな楽しいこともあったろうと思う。非常に残念だ」と話した。

池田衣里さん=ツイッターから
■あんなに笑っていたのに
東京外語大1年の西堀響(ひびき)さん(19)はスペイン語を専攻。小学校で同じクラスで、同じ英語教室にも通っていた女性(18)は「勉強熱心。給食を食べる時もニコニコ笑っていた」と振り返る。事故を知って、涙がこぼれた。「あんなに笑っていた響がいないなんて信じられない。いまも同姓同名の別人だと思いたい」

西堀響さん=フェイスブックから
■「技士として病院で働きたい」
広島国際大1年の山田萌(めぐみ)さん(19)は「臨床工学技士として病院で働きたい」と保健医療学部で学んでいた。講師は「どんなことも笑顔で臨み、さわやかな学生」と惜しむ。沖縄出身で、広島県東広島市のキャンパスにある学生寮で暮らしていた。同じ階の女子学生(19)は「亡くなったなんて信じられない」と語った。

山田萌さん=広島国際大ライフセービング部のフェイスブックから
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【法政】西原季輝さん(21)=千葉県市川市▽花岡磨由さん(22)=東京都多摩市▽林晃孝さん(22)=川崎市【早稲田】阿部真理絵さん(22)=さいたま市▽小室結さん(21)=川崎市▽田端勇登さん(22)=東京都渋谷区【東京農工】大谷陸人さん(19)=東京都杉並区▽小嶋亮太さん(19)=東京都小金井市【首都大学東京】田原寛さん(19)=東京都八王子市【東海】池田衣里さん(19)=東京都多摩市【東京外国語】西堀響さん(19)=千葉市【広島国際】山田萌さん(19)=広島県東広島市
(朝日新聞デジタル 2016年1月16日20時58分)
亡くなった小室さん「世界に幸せな住まいを」 バス事故
15日未明のスキーツアーのバス事故は、命とともに夢も奪った。社会での活躍をめざして努力する姿を見てきた親や友人たちは、理不尽な死にあるべき生を重ね、悲しみに暮れた。
「世界中の人が幸せに暮らせるような住まいの環境づくりをしたい」。早稲田大国際教養学部4年の小室結(ゆい)さん(21)は母久美子さん(52)にそう語っていた。海外の都市開発にたずさわることをめざし、内定していた大手不動産会社で4月から新生活をスタートするはずだった。
父親が商社勤務で、小学4年まで香港や台湾で過ごした。中国語は話せたが「帰国子女なのに英語を話せないのはいや」と言い、中学と高校では英語を一生懸命に勉強したという。ロンドン大にも1年間、留学した。「何にでも前向きで、いつも全力でやる子でした。母親として誇りに思います」。久美子さんは涙ぐんだ。

小室結さん=フェイスブックから

バス事故で亡くなった小室結さんの通夜には大勢の参列者が集まり、式場の外まで長い列が続いていた=16日午後7時21分、川崎市宮前区、越田省吾撮影
(朝日新聞デジタル 2016年1月16日23時20分)