女子大生声優、ロシアで熱唱 仕事を生かして友好目指す
■上坂すみれさん(22)
モスクワの大ホールを埋めたロシアの若者たち。割れんばかりの拍手に、涙がこぼれた。11月、ロシア最大の日本ポップカルチャーの祭典「J―FEST」に初めて出演。自身が演じたアニメ「中二病でも恋がしたい!」のキャラクターの声を披露し、デビュー曲を熱唱した。「ロシアに来て、皆さんに会うのが夢でした」
1991年12月のソ連崩壊直前に生まれ、共産主義時代のこの国を知らずに育った。ネットで見つけた旧ソ連の国歌を聴いて心揺さぶられた。でも、周囲の大人たちのイメージは「怖い国」。世界最高峰の音楽やバレエ、演劇、文学を育む一方、シベリア抑留や北方領土問題など暗い話題ばかり。
「もうちょっと普通の人が住んでるんじゃないの?」。上智大学ロシア語学科に進学し、ロシア語演劇部の合宿で初めて訪れたモスクワ。若者たちと、日本の人気アニメやファッションの話題で盛り上がった。よく笑い、冗談も言い、日本を尊敬している。まったく別のロシアが、そこにあった。
2年前、大学在学中にあこがれの声優に。約30のアニメやゲームに出演した。そして芽生えた夢。「仕事を生かして日ロの人々を近づけたい」。チャンスを待った。
「日本のポップカルチャーを通して、両国の若者が理解を深め合えば、領土問題解決の土台になる」。ロシアのアニメ出演が次の夢だ。【関根和弘】