32年の無戸籍解消する判決「やっと堂々と生きられる」
生まれて32年間、戸籍を持たない埼玉県の女性が、母親(74)の元夫(故人)と親子関係がないことの確認を求めた訴訟で、神戸家裁(池町知佐子裁判官)は18日、女性の訴えを認める判決を言い渡した。判決は確定する見通しで、判決文と出生届を自治体に提出すれば女性は母親の戸籍に記載される。
判決によると、女性の母親は元夫の暴力を受け、1980年に兵庫県の自宅を出た。元夫との婚姻関係が続いていた81年、東京で知り合った男性との間に女性が生まれた。「妻が妊娠した時は夫の子と推定する」との民法の規定(嫡出〈ちゃくしゅつ〉推定)で戸籍上の父親は元夫となるため、「真実と違う」と出生届を出さなかった。
女性は昨年末に支援団体に相談し、今年4月に提訴。84年に離婚した元夫はすでに亡くなり、実父の行方は分からないためにDNA型鑑定は行えず、原告側は母親の証言をもとに「元夫とは父子関係がない」と主張。元夫が故人のため代わりに被告となった神戸地検は積極的な反証をせず、判決は「妊娠以前から元夫とは事実上の離婚状態にあり、実父ではない」と認定した。(青田貴光)