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【iPS細胞】世界初の移植手術 目の難病患者に 執刀医「重圧かかった」

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iPS細胞、初の手術 理研など、目の難病患者に移植

理化学研究所などのチームは12日、目の難病患者の皮膚から作製したiPS細胞(人工多能性幹細胞)を網膜の組織に変化させ、患者に移植する手術を実施したと発表した。手術は成功したといい、患者の容体も安定している。2007年にヒトでiPS細胞が作製されてから、実際に患者の体に移植したのは世界で初めて。

今回は治療効果よりも、安全性の確認を目的とした臨床研究で、計6人に行う予定。再生医療の臨床応用に向けた大きな一歩となる。

理研発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の高橋政代プロジェクトリーダーを中心に研究を進め、先端医療振興財団(同)の先端医療センター病院が手術を実施した。


夢の医療へ希望の光 iPS手術執刀医「重圧かかった」

失った体の組織を再生させる「夢の医療」につながるか――。日本発のiPS細胞は、その実力を試される段階に入った。世界初となる手術を慎重に進めてきた研究者。さまざまな難病を抱える患者たちは、期待と冷静さを交えながら見守る。

理化学研究所や先端医療振興財団のチームは12日夜、神戸市中央区の神戸ポートピアホテルで記者会見し、約100人の報道陣が集まった。

同財団によると、手術は予定していた約2時間で終了した。

「プレッシャーがかかる手術で、ほっとしている」と、執刀にあたった同財団先端医療センター病院の栗本康夫・眼科統括部長。網膜が組織にくっついていたが、懸念していた出血も少なく抑えられたという。患者本人も、術後の会話などから、ほっとしている様子だったという。

研究を率いてきた理研発生・再生科学総合研究センター(CDB)の高橋政代プロジェクトリーダーも「無事に終わり、安堵(あんど)している」と笑顔を見せながら話した。手術室に入り、移植の現場に立ち会ったという。「患者さん方の期待、希望に一つの答えを渡せたのかな」

iPS細胞は、治療が難しいパーキンソン病や脊髄(せきずい)損傷などへの応用が期待され、研究が進められている。高橋さんは「細胞の量などが違い、必ずしも他の細胞で適用できるものではない」と冷静に話した。

手術の計画は昨夏に厚生労働省の承認を受け、実施に向けて準備を進めてきた。しかし、その間、CDBはSTAP細胞の論文問題で大きく揺らいだ。名称も変更され、規模も縮小する改革が進められることになっている。

そんななかでの手術の「成功」に、高橋さんは「良かったというのが一番です。みんなでこうやって前向きに進んでいきたい」と話した。

■会見での主な発言要旨

 《栗本康夫・先端医療センター病院眼科統括部長》 (手術は)ちょうど2時間で終えた。患者さんは覚醒されてお元気にされていることまで確認した。引き続き、患者さんが良い経過をたどれるように最善を尽くしたい。

 《高橋政代・理研プロジェクトリーダー》 2000年ごろにES細胞で上皮細胞の研究を始め、07年の(ヒトの細胞を使った)iPS細胞によって、拒絶反応という最後の課題が取り払われた。非常に心配だったが無事に終わり安堵(あんど)している。臨床研究の1例目なので、大きな一歩と思いたいが、治療するためには今後もどんどん進んでいかなければならない。

――iPS細胞が登場したときの気持ちは。

 《高橋》 (理研の)笹井(芳樹)先生に初めてES細胞で作った網膜を見せてもらえて始まった。拒絶反応が問題と思っていた。そのときにiPS細胞が出てきたのは幸いだと思った。

――手術を受けた患者の様子は?

 《栗本》 今日の朝は「不安もあったけれども、今は落ち着いています、お願いします」と。手術が終わって、麻酔から覚醒して病室に帰ってからは、うつむいていないといけないので、「しんどいわー」と。それだけ非常に元気でしたね。

――コスト面でいくらかかるのか?

 《高橋》 今回の1例目では、クリーンルームで細胞をつくるための部屋の維持費で数千万以上はかかる。コストの問題を解決しないといけない。いずれはコストダウンできると思う。

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(朝日新聞社提供) 


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