パック洗剤、誤飲注意 乳幼児、3カ月で24件 P&Gのジェルボール
洗濯用のパック型液体洗剤を子どもが誤って口に入れるなどの事故が今年4月の発売以降、相次いでいることがわかった。日本中毒情報センター(本部・茨城県つくば市)には3カ月間で24件の事故の情報が寄せられた。25日、東京都内で開かれた日本中毒学会で発表した。
■ひと口大のゼリーに見える形状
この洗剤は、生活用品大手「P&Gジャパン」(神戸市)の「ジェルボール」という形状のもの。水に溶ける透明フィルムで洗濯1回分の液体洗剤を包んでいる。計量の手間が省け、液だれもなく使うことができる。1個の大きさは、縦約4センチ、横約3・5センチ、高さ約2センチ。一口大のゼリーのようなお菓子にも見える。
情報センターにはパック型液体洗剤の誤飲などの事故に関する情報が7月10日までに25件寄せられた。高齢者の誤飲1件以外は、0~6歳の子どもだった。子どもの事故24件のうち、19件が誤飲による嘔吐(おうと)やせきなどの症状が出た。11件は医療機関を受診したが、いずれも症状がないか軽症で入院の必要はなかったという。
きょうだいで、上の子どもが洗剤を入れる箱のふたを開けたままにしていたところ、赤ちゃんが口に入れてしまった例などがあった。また、子どもがパック型洗剤を握りつぶし、洗剤が目に入った例もあった。これまでの液体や粉末の洗剤の事故は0~2歳の子どもが中心だが、パック型液体洗剤は3~5歳でも事故を起こすことが多かった。
情報センターの波多野弥生さんは「洗剤は口に含むと違和感を感じるので大量に飲むことは少ないが、飲んだ量や飲んでからどのくらい時間がたっているかで対処法が違う。医療機関や情報センターに相談してほしい」と話す。情報センターは「中毒110番」(072・727・2499)で相談を24時間受け付けている。
(福宮智代)
■発売前に懸念 消費者庁
P&Gジャパンによると、欧米では複数社が同種の商品を販売していて、英国ではシェアの2割を占めているという。海外では子どもの誤飲事故が多発し、同社も日本での販売前に認識していた。
消費者庁も販売前から、同社に複数回、懸念を伝え対策を求めていた。これに対し同社は、容器のふたのツメを増やして子どもが開けにくくするなどした。P&Gの海外の商品は、一個の形状を大きくするなどの対策をとっているという。
消費者庁消費者安全課は「発売から短期間に事故情報がある。今のところ重大事故はないが、P&Gの対策が十分か今後も注視していく」としている。
ただ、事故を防ぐための国の規制には限界もある。
経済産業省によると、国内では洗剤の容器の形を定めた法律はなく、販売停止など強制力ある対応ができるのは全治1カ月以上の重大事故が起きた時だけだ。
消費者庁によると、死亡事故が社会問題化したこんにゃくゼリーでも容器の形の法的規制はなく、子どもと高齢者が食べない前提で販売が続いている。
P&Gの広報担当者は「ジェルボールで多くの問い合わせを受けているが、誤飲事故自体は様々な商品で起こりうる。今後もCMなどで事故防止を訴えていく」といい、製品の色や形状の変更は予定していないという。
(小寺陽一郎、小泉浩樹)
■事故、化粧品が最多
日本中毒情報センターによると、家庭用品の誤飲などの事故に関する相談は、2012年に約2万2千件あり、うち約1万8千件が5歳以下の乳幼児だった。
品目別では、化粧水などの「化粧品」(18・3%)、たばこの吸い殻などの「たばこ関連品」(14・1%)、「乾燥剤・鮮度保持剤」(11・4%)の順。
今回の事故のような洗濯洗剤などの「洗浄剤」(10・5%)は4番目で、漂白中の漂白剤を飲んでしまう例が一番多い。
また、最近では問題のジェルボール洗剤だけでなく、食洗機用や台所・トイレ用の洗剤などでも、1回分が小分けされた、子どもの口に入る形状の商品が多く発売されている。
情報センターによると、事故は、家事で子どもから目が離れやすい朝や夕方の発生が目立つという。
■手の届かぬ場所に
子どもの事故に詳しい長村敏生・京都第二赤十字病院小児科副部長の話 5歳くらいまでの子どもは、口の大きさより小さい3~4センチ程度以下の物なら何でも誤飲の可能性がある。菓子のようにカラフルな物ならなおさらだ。大人の行動をよく見ているので、洗剤など毎日触れる日用品ほどまねをして触り、口に入れてしまうこともある。誤飲を防ぐには、用途に関係なく、子どもの口に入る大きさの物は手の届かないところにしまうしかない。