
物・サービス・場所などを、多くの人と共有・交換して利用する社会的な仕組みであるシェアリングエコノミーの市場規模は、将来的に2兆6300億円に達する可能性があるといわれている。
シェアリングエコノミー協会は9月7日、シェアから生まれる新しい社会を考えるイベント「シェアサミット2018」を東京・永田町で開催した。
「SHARE × WORK 働き方の再定義 21世紀の働くとは?」と題したパネルディスカッションでは、21世紀の働き方について議論した。
メンバーシップ制ワークスペース「みどり荘」を主宰するMirai Instituteの小柴美保さん、コワーキングスペース「WeWork」日本ゼネラルマネージャーの高橋正巳さん、住友生命保険相互会社の堀辰雄さん、経済産業省の伊藤さん、クラウドワークス社長の吉田浩一郎さんが登壇。白熱のトークをレポートする。
映画『オーシャンズ11』型の働き方とは?
みどり荘は、東京の目黒区、千代田区、港区に拠点を持つメンバーシップ制ワークスペース。さまざまな職業の人たちが、お金を出して、仕事場をシェアしているイメージだ。
ヒッピーのようなライフスタイルの人もおり、様々な国籍のメンバーがいるのが特徴だ。毎年、約3カ月ほど日本に滞在するスイス人もいるという。
時には、メンバーがチームとなって働くこともある。小柴さんはその働き方を、主人公と様々なスペシャリスト集団が活躍するアクション映画に例えた。
「(映画)『オーシャンズ11型』というか、プロジェクトがあればチームを作っていく。(みどり荘の)メンバーがチームとなって働くことが多いですね」
また、各拠点にコミュニティ・オーガナイザーを置いており、人と人との繋がりを促したり、その人に合ったイベントを案内したり、コミュニティづくりを工夫している。
フリーランスが活躍する時代に、「企業に代わる組織」としてコミュニティを運営しているという。
「コミュニティをいかに作るか。家で仕事はできるけど、ここに来ていい1日だったと思える。企業に代わる組織として、いろんな人が活きる。そこにフォーカスしていく」と語った。
注目のWeWork、料金はいくらなの?
一方、アメリカ・ニューヨークで生まれたWeWorkはスタートアップにフォーカスしたワークスペース。ニューヨークのスタートアップの5人に1人は、WeWorkで働いているという。
日本には2018年9月現在、東京、横山、大阪、福岡に拠点がある。
席を選べるフリーアドレスの「ホットデスク」、固定の「専用デスク」、壁に囲まれたオフィスのような「プライベートオフィス」を提供している。
料金は、拠点によって異なるが、東京渋谷区神宮前のホットデスクの場合、月額7万円だという。
日中がコーヒーやお茶、夜はビールが無料で飲める。日によって、ブロックチェーンの勉強会やヨガなどのイベントが開催されている。
共有エリアのほか、ネット環境や清掃サービスなどは完備されており、オフィス開設の初期費用やネットワーキングの機会を考えれば、リーズナブルだ。
長時間労働だけじゃない「働き方改革」の課題
経済産業省の伊藤さんが、政府が推進する働き方改革を説明した。
「日本では、一社で長く働くことがよしとされるが、兼業やフリーランスも含めて、今は政府をあげて働きかた改革に取り組んでいる」
これまで、多くの企業で副業は認められていなかったが、政府は3月に「モデル就業規則」を、「労働者は、時勤務時間外に置いて、他の会社の業務に従事することができる」に変更。
今後も、フリーランスや副業など柔軟な働き方を推進する取り組みを実施しているという。
「個人が主役になる」時代
シェアリングエコノミーによって未来の働き方はどう変わるのか。個人の生き方や働き方について、それぞれが抱負を語った。
「個人が主役になる。そういう時代になっている」と語ったのは、小柴さんだ。「みどり荘が企業に変わるセーフティネットになるといい。バックオフィスや法務などを整備したら、一人ひとりが働きやすくなる」と話した。
堀さんは、「一人ひとりが自分のやっていることにワクワクしていたら、おのずと工夫して、いろんな人が交流して、自分がやりがいと感じる。そういう世の中を作っていきたい」とコメントした。
堀さんは、保険会社の視点から、「個人の働き方が多様になっていく。健康増進を含めた保険を通じて、お客さんに健康になってもらう。何より社会にとっても一人ひとりが健康になるようしたい」と語った。
伊藤さんは、日本が抱えている最大の課題は、(狭い世界に閉じこもっていて、外部に目を向けない)"たこ壺"だとして、「個人と企業、民と官が連携していければいい」と展望を語った。