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「アニメーターだけじゃ食っていけない」3年離職率が9割、厳しいアニメ制作現場で働き方改革に挑む人々

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 「クールジャパン」の象徴として、世界に誇る日本のアニメ。「日本動画協会」の調査によるれば、日本のアニメ産業の売り上げは2016年に2兆円を突破した。この4月クールも70作品が新たに公開されるなど、勢いはとどまることを知らない。その一方で、アニメの制作現場は"ブラック"だというイメージが定着して久しく、低賃金や離職率の高さも指摘され続けてきた。

 22日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、そんな現状を打開すべく、"ホワイト化計画"に取り組む人々を取材した。

■「アニメーターだけじゃ食っていけない」...若手のための寮も

 まず、杉並区にあるアニメーター向けの寮を訪ねた。設立したのは、彼らを支えるため2014年に設立されたNPO法人「アニメーター支援機構」で、管理人は理事長の菅原潤氏が務めている。資金は支援金やクラウドファンディングなどによって賄われている。

 部屋は六畳一間で、家賃は3万円以下。様々な会社に所属する、入社3年目までの若手が暮らしている。破格の価格設定の理由は、アニメーターの低賃金にある。

 そもそもアニメはどう作られるのだろうか。

 画面が切り替わって次の画面になるまでを「カット」と呼び、30分のテレビアニメの場合、通常300~400カットで構成されている。そしてキャラクターや背景に動きをつけるため、1カットはパラパラ漫画のように何十、何百枚の絵から作られている。その絵を描いているのがアニメーターで、「原画マン」と「動画マン」に分業している。原画マンが動きのキーとなる絵を作り、動画マンがそのつながりを描いていく。映画・ドラマ同様、"設計図"となる「絵コンテ」があり、原画マンはその絵コンテを元に放送に耐えられるだけのクオリティの絵を描かなければならないため、想像力・画力が求められる。一般的に、アニメーターたちは動画マンからキャリアをスタートさせ、まずは原画マンを目指すのだという。テレビアニメ1話は、そんな彼らによって作られた約3000枚の絵から成り立っているのだ。

 ある寮生は「動画を下積みで2、3年やった後に原画になるが、内容は全く違うので、空いた時間に絵を描いて原画マンになるための準備をすることが必要。アルバイトばかりしていると原画マンになったときにキツい。だけど最初の給料は1万円とか。アニメーターだけじゃ食っていけない」と話す。

 寮生の新人アニメーター・阿久津徹也さんも「1枚描いたら大体200円なので、500枚で10万円の計算。ただ、これは速く描ける人、効率よく描ける人が到達できるラインで、新人だと100枚描けるかどうか。場合によっては"研修"という名目で、給料ゼロがずっと続く場合もある」と話す。原画マン・動画マンの大半は歩合制で給料を稼いでいるのだ。

 アニメーター支援機構によれば、彼らの年収は20代前半の原画マンが平均282万円、動画マンが平均111万円となっている(2013年調べ)。過酷な現場であることもあいまって、3年での離職率は9割に達している。

■複雑な絵ほど高い報酬が得られる仕組みに

 現在「ラルケ」名義で、ゲームと現実世界を舞台にした青春ストーリー『七星のスバル』を制作する1979年設立の老舗「スタジオ雲雀」では、状況を少しでも改善しようと、4月から労力に応じた報酬制を導入した。

 原画マンの報酬はカット数×4000円だというが、業界の慣習では、登場するキャラクターが1人でも3人でも同じ。つまり、いくら手間暇のかかる場面だったとしても報酬は変わらないのが現実だった。そこで、スタジオ雲雀では、複雑な絵ほど高い報酬が得られるようにした。現在は原画マンだけが対象だが、将来的には動画マンにも導入する考えだ。

 同社制作作部の宮崎裕司部長は「アニメは元気な市場で規模も大きい。若い子たちが20年、30年と働いていけるような環境を作っていかないと、日本アニメの先はないかなと思った。変えていかないといけない」と話す。

■「9時出勤にして、なるべく早く帰ることにチャレンジ」

 制作方法の変革を試みているのが、現在Netflixで全世界独占配信中の『DEVILMAN crybaby』を手がけ注目を集めるアニメ制作会社「サイエンスSARU」だ。

 彼らの武器が、キーとなる原画を読み込んでデジタル化、ソフトウェア上で絵に動きをつけるフラッシュアニメーションだ。1枚ずつ手書きだった作業をコンピューター上で仕上げるため、アニメ1話分で必要な絵の枚数が大幅に削減できるという。

 同社アニメーターのアベル・ゴンゴラ氏は「従来の方法よりも変更しやすい」と話す。韓国出身で、イギリス留学を経てアニメーターを目指し日本にやってきたプロデューサーのチェ・ウニョン氏は、当時のアニメ制作現場に驚愕した話す。「建物に入ったら別世界だった。机の下で寝ていたり、24時間それぞれのリズムで仕事をしているので、みんながバラバラ。なるべく9時出勤にしてなるべく早く帰ることにチャレンジしている。社内にこだらなくていい作業は外に振ったり、新しい技術を導入したり、色んな方面で改善しないと現場は良くならない」と話した。

■制作会社もきちんとアピールを

 日本アニメの産業売り上げが2009年の約1.25兆円から2013年には1.47兆円と18%増えているのに対し、動画マンと呼ばれる駆け出しのアニメーターの年収は2009年の105.6万円から2013年には111.0万円と5%しか増えていない。

 アニメ監督で「日本アニメーター・演出協会」代表理事の入江泰浩氏は「グッズや海外での配信などの部分が膨らんでいるが、制作予算、現場に流れてくるお金は変っていない。色々な会社が少しずつお金を出し合う制作委員会方式によって色々な作品が作られるようになった。作品数が増えたことで、若い世代の監督がチャレンジできる環境にもなった。ただ、ヒットしても制作会社にはお金があまり下りて来ず、アニメーターなど現場スタッフの人件費には回ってこない」と話す。

 「助成金やブラック企業の取締りなど、制度面のアプローチも当然必要。同時に、制作会社側も"これまでと同じ金額で作れるでしょう"と言われればそれで受注してしまうし、アニメーター自身も"もっと払ってください"と言わない状況が長く続いてきたことも原因。このままでは、中国など人口が多いところが強くなってしまう。アニメーターを確保して、安定してアニメーションを作り続けるためには、制作会社がきちんとアピールし、Netflixのように資金の豊富なところに自ら営業に行くというような取り組みを積極的に進めていく必要がある」。

 また、デジタル技術については「『デビルマン』の作り方はフィルムには適していると思うが、例えば京都アニメーションさんの『響け!ユーフォニアム』のような、影やハイライトが細かく入っている作品に応用するのはまだ現状は難しい」と指摘していた。

 慶應義塾大学の若新雄純・特任准教授は「日本には海外に比べて"売れないかもしれないけれど、作品を作る土壌は守っていこう"という雰囲気がないし、投資する人も少ない。他の分野に比べ、アニメの地位が低かった時代もあったが、これからは金を出し合ってでも守らなければいけないものだという認識にならなければならない」と訴えていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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