サプライズ選出、大久保叫んだ 一周忌の父が遺した願い
亡き父の思いとともに、2度目の大舞台へ――。12日に発表されたサッカー・ワールドカップ(W杯)ブラジル大会の日本代表に、大久保嘉人(31)が選ばれた。ザッケローニ監督の就任後、代表戦出場わずか1試合でのサプライズ選出。ちょうど1年前に亡くなった父克博さんの願いを、最高のかたちでかなえた。
午後2時からの代表発表。ザッケローニ監督が「オオクボ」と読み上げると、会見会場にどよめきが起こった。大久保は、その様子をJ1川崎のチームメートとともに移動中のバスでテレビ中継で見た。名前が呼ばれた瞬間、車内は歓声に包まれた。「選ばれないと思っていたので、自分も一緒に叫んだ。落選した選手の分も活躍したい」と気持ちを新たにした。
前回南アフリカ大会は主力として16強入りに貢献。だがその後、2012年2月を最後に日本代表に呼ばれなくなった。
昨年、内臓疾患で闘病中だった父に電話で「代表に入れよ」と励まされた。大久保は「代表戦なら(父が)テレビで見られる。代表に入りたい思いは強くなった」。数日後、父は61歳で亡くなった。遺書には「もう1回代表に入れ」とあった。大久保はこの年、26得点で初のJ1得点王に。今季も日本選手最多となる8点を挙げている。
発表前日の11日。故郷の福岡で、父が眠る墓に語りかけた。「選ばれるといいな」。そして、舞い込んだ吉報。くしくも12日は克博さんの一周忌だった。「絶対に願ってくれていたと思う。よかった」。笑みを浮かべながら、右腕にはめた父の形見の時計をそっとさすった。(清水寿之)