鳥インフル、渡り鳥から感染か 熊本県、11万羽殺処分
熊本県多良木(たらぎ)町の養鶏場で高病原性のH5型鳥インフルエンザウイルスの感染が確認された問題で、県は14日夜までに、この養鶏場と、経営者が同県相良(さがら)村に持つ養鶏場で飼育されている全11万2千羽の殺処分を終えた。16日午前までに埋却する。県は、ウイルスが渡り鳥を介して運ばれた可能性が高いとみている。
鳥インフルエンザは、今年に入って韓国でH5N8型の感染が急速に拡大しており、県は14日、「渡り鳥がウイルスを運び、人の靴底や小動物を介して鶏に感染した可能性が高い」との見方を示した。県は約10年前から鳥インフルエンザ対策を進めてきており、この養鶏場にも対策の不備などは特になかったという。
県は、2養鶏場のそれぞれ半径約3キロ以内(5戸、約4万3千羽)を鶏や卵の「移動制限区域」に、3~10キロ(42戸、約40万羽)を区域外への出荷を禁じる「搬出制限区域」に設定。周辺6市町村の道路計13カ所に消毒地点を設け、通る車の消毒をしており、今後17カ所に増やす予定。
県によると、12日午後3時半に多良木町の養鶏場からの通報で11日に70羽、12日に200羽が死んだことが判明。簡易検査を経て、10羽の遺伝子検査をし、2羽の感染を確認した。動物衛生研究所(茨城県つくば市)でウイルス型などを調べている。この養鶏場では13日までに、飼育する5万6千羽のうち1100羽以上が死んだ。
殺処分は13日から始め、当初は14日昼までに終える予定だったが、大雨などの影響で、14日夜までずれ込んだ。
農林水産省の家きん疾病小委員会の委員長で鳥取大の伊藤寿啓教授(公衆衛生学)は「感染した野鳥はどこにいてもおかしくない。渡り鳥の一部はこれから北上するため、東日本でも警戒が必要だ。鳥の感染は封じ込めに失敗すると爆発的に広がる危険がある。感染を今回の養鶏場だけにとどめることが重要」と指摘する。
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〈鳥インフルエンザ〉 鶏やアヒルなどの鳥類が感染するインフルエンザ。ウイルスの型がH5とH7のものが病原性が高いとされ、致死率も高い。ウイルスは鳥や豚などに感染を繰り返して突然変異し、強い毒性を持つことがある。農林水産省などによると、東南アジアなど世界中で毎年のように流行している。2003~04年には日本などアジアを中心にH5N1型が大流行し、1億羽以上の鶏などが死んだり、処分されたりした。今年に入って韓国でH5N8型が大流行し、先月末までに1100万羽以上が殺処分された。昨年は中国でH7N9型の人への感染が報告された。鶏肉や卵を食べた人に感染したという例は、世界的に確認されていない。