秘密保護法、急いだ自公 維新・みんな、目立った迷走
6日に成立した特定秘密保護法は、自民、公明両党に日本維新の会、みんなの党が加わった4党の修正で完成した。ところが最後は、自公だけで成立させる異例の展開に。維新、みんなは「与党の補完勢力」との批判を受けて立ち位置がぶれ続ける一方、自公は成立を急ぐあまりに野党を取り込めなかった。結局、いずれの党もダメージを受ける結果に終わった。
衆院では賛成、参院では退席――。最も対応がぶれたのはみんなだった。
「我々は修正案に賛成し、衆院を通した。しかし参院に行ってから、実に無謀な国会対応が行われた」。渡辺喜美代表は6日夜の会見で強調した。
渡辺氏は、衆院で賛成したときは「主張が受け入れられた」と胸を張っていたが、この日は一転、特定秘密保護法を「国民が大変不安に思っている。自由や民主主義が侵害される不安につながる」と批判。こうした揺れが一部の衆参議員の採決造反につながり、分裂の火種が残った。
維新でも、与党と修正合意したとたんに、党内の若手を中心に「与党の補完勢力になるのか」と批判が噴出。党の分裂を避ける狙いもあって、与党の強引な国会運営を大義名分に与党批判に転じた。松野頼久・国会議員団幹事長は6日夜の代議士会で「中身には賛成だが、国会の運びがひどい」などと述べた。
一方、自民党は維新、みんなの取り込みで野党を分断し、世論の批判もかわす戦略を描いていた。
協議は自民ペースで進んだ。みんなの渡辺代表が賛成に前のめりで、同党との修正をまとめると、みんなとの蜜月ぶりを見せつけて維新を引っ張り込んだ。
転機は参院での審議だった。会期内成立を急ぐあまり、十分な審議時間を確保しないまま採決へと突き進み、結局、維新、みんなの離反を招いた。
自民のベテラン議員は「今回は官邸の失敗だ。もっとあっさり終わると甘く見ていたのだろう」と指摘。衆院本会議採決で棄権に回った自民の村上誠一郎元行革担当相は6日夜、こう語った。「丁寧に時間をかけてやるべきことをあまり拙速にすると、民意は『倍返し』で返ってくる」
■野党、与党の国会運営批判
特定秘密保護法が成立した6日深夜、首相官邸の補佐官や自民、公明両党は国会運営に問題はなかったと強調した。野党側は与党の強引な運営を批判した。
自民党の脇雅史参院幹事長は「わが国にとって必要な法律だから、これからいかに国民に理解を得ながら有効に使っていくかが大事だ」と述べた。衛藤晟一首相補佐官は記者団に、与党の国会運営は国民の理解を得られるとの考えを示したうえで「安倍政権の支持率は落ちないし、一時的に落ちても必ず回復すると思う」と語った。
一方、民主党の海江田万里代表は「安倍政権は確かに選挙で多くの国民の支持を得たが、今度のような暴挙を許したわけではない」と怒りをあらわにした。共産党の志位和夫委員長は「通ったから仕方ないではなく、きょうをスタートにして、秘密保護法撤廃の運動にたちあがろう。この強行劇は安倍政権の終わりの始まりだ」と話した。社民党の吉田忠智党首は民主党について「野党第1党として、他の野党としっかり連携を図りながら毅然(きぜん)とした対応を取っていただきたかった」と注文をつけた。
修正協議に応じた日本維新の会の片山虎之助・国会議員団政調会長は「今後もよい政策は政府、与党を応援していきたい。おかしいところは直す。それが役割だ」と述べ、今後も連携する可能性を示唆した。みんなの党の方針は「退席」だったが、薬害エイズの被害者、川田龍平参院議員は反対票を投じた。「官僚による恣意(しい)的な秘密指定を認めてしまったら薬害被害を防ぐことができない」